第7話 新たな出会い

私は、帝国でもオージン・マクラビアン公爵令息と時々会う事になった。友人のナンシー侯爵令嬢とは、帝国に留学してから会える頻度が減った。ナンシーは帝国での婚活に忙しくしているらしい。留学していた為、周囲より遅い婚活になってしまい、少し焦っていると前回会った時は言っていた。


(婚活なんて、今の私には関係ないわ。)


今日は、帝国大学院の図書館へ来ていた。ここでは、過去の国税調査票を閲覧できる。帝国大学院の図書館には様々な記録が所蔵されていた。


国税調査票は図書館の2階の最奥に所蔵されているらしい。私は図書館の中央の螺旋階段を上り2階へ行く。広大な図書館は、古い本独特の乾燥した匂いと、静けさに包まれている。2階は薄暗く人通りが少なかった。


無数の本棚、数々の蔵書の中を進んで行く。文庫本や小説、児童書や図鑑等よく読まれる図書は全て1階にある。


奥へ行くほど、心なしか薄暗くなっているようだ。


カツ、カツ、カツ、カツ


足音が大きく響き、反響する。


本棚の前は分厚い絨毯が敷き詰められているが、通路は固い大理石が奥まで伸びていた。


経済学、医学、社会学、文学、生活学、産業学、、、、


最奥の本棚にたどり着いた。国税調査と本棚に書かれていた。


私は、本棚にかかれた番号を頼りに奥へ進む。


私が目指す場所には先客がいた。


赤髪の美しい女性は、国税調査票を熱心に見ている。心なしか顔色が悪いようだった。


(どうしたのかしら?様子が変だわ。)


その時、目の前の女性がふらりと後方へ倒れそうになった。


私は慌てて彼女の肩を支える。


女性は私を見て驚いた表情をした。


(初対面のはずなのに、どうしたのかしら。)


「大丈夫ですか?」


赤髪の女性は、両目を強く閉じた後溜息をつき返事をした。


「ありがとう。私はイマージュ・マックバーンよ。貴方のお名前をお聞きしてもよろしいかしら?」


(マックバーン?まさか皇女様!)


私は、慌てて名乗る。


「失礼いたしました。皇女様。私はイリーナと申します。」


イマージュ皇女は言う。


「イリーナ?」


私は言った。

「はい。元々は隣国の男爵家の出身ですが、今はただのイリーナです。調子は大丈夫ですか?まだ顔色が悪いように見えますが。」


イマージュ皇女は言った。

「貴方にはみっともない所を見せてしまいました。私は大丈夫です。少し疲れていたのかもしれません。」


イマージュ皇女は、本棚に国税調査票を戻した。


年数ごとに整理しファイリングされている国税調査票は数十冊が本棚に並んでいる。


(どうして、皇女様が国税調査票を調べているのだろう?)


豊かな赤髪で、豊満な肉体を持つイマージュ皇女は私に言った。


「ねえ、貴方。もう少しお話ししたいわ。よかったら一緒に来て。」


先ほど皇女様は倒れそうになったばかりだ。それに、帝国皇女様とお近づきになっていれば、私のリム商会の販路がさらに広がる可能性がある。


私は、微笑み言った。


「ええ、もちろん。ご一緒させていただきます。」


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