狂愛

夕霧

第1話

 私は恋する女子高生。

 好きな人は同じ部活の先輩で、サッカー部のエース。

 私はマネージャーとして、…いや、彼女として、先輩を支えたい。


 私と先輩が出会ったのは3ヶ月前。

 彼氏が急に海外への引越しが決まって、遠距離になるから別れてほしいって。

 嫌だって言っても聞いてくれなくて、

 雨の中傘もささずに歩いてた。


 そしたら、先輩が『どうしたの?』って声をかけてくれて、傘をわざわざ買って私にくれた。なんて、優しい人なんだろうって思った。

 そして、高校へ入学して驚いた。


 あの人だ…


 あの日のことをお礼したら、先輩は『もう大丈夫?』って心配もしてくれて、


 あぁ。私、この人のこと好きだ。


 そう思うようになった。

 放課後、先輩がグラウンドで練習してる姿を見て、サッカー部ってことを知った。

 その姿を見てすぐに入部届けを出して、私はサッカー部のマネージャーになった。


 頼られることも多くて、私は充実した日々を過ごしていた。でも、やっぱり彼女になりたくて、勇気を出して先輩に告白した。


「先輩!5ヶ月前、傘を買ってくれた日、街ゆく人が横目で私を見ながら無視してくなか、傘をくれて、学校で再会してからもずっと気にかけてくれて、私、先輩のことが大好きなんです!付き合ってください」


 …答えはNoだった。


 他校に彼女が居るんだって。

 振られ、ちゃった。


 その日も雨が降っていた。

 校舎内に居たから濡れたりはしなかったけど。あの日を思い出すようだった。


 …私を振った男は許さない。

 徹底的に追い詰めてやる。

 エース?

 そんなの関係ない。

 私を振ったこと、後悔させてやる。


 次の日から先輩をハブにした。

 学校にある事ない事ばらまいた。

 もちろん、私が犯人って分からないように。


 先輩の荷物にタバコ入れたり、先輩が彼女さんとラブホテルに行く姿を写真とって、それを現像して、先輩のクラスの黒板に大きく貼り付けたり。


 けど、私はきっかけにすぎない。

 ことを大きくするのは周りの力。


 からかうのか、軽蔑か、

 そして、噂は一瞬で広がる。


 でも、どういうわけか、先輩はこの件の犯人が私だと分かってしまった。

 私は校舎裏に呼び出された。


 あの時、振ったことを謝るのかな?

 俺と付き合って下さい!って言われるのかな?私は胸を踊らせながら校舎裏に向かった。

 だけど、先輩は私を怒鳴るだけだった。


 『お前のせいで、俺の人生はお終いだ!』


 なんで、私のせいにするの?

 先輩が悪いんじゃん。

 私は何も悪くない…。悪いのは先輩だ。


 先輩は私の方を向いてくれない。だったら、先輩が振り向いてくれるように、先輩の彼女にちょっかいをかけてあげよう。


 っていっても、もうだいぶ飛び火をしていて、今更私がどうこうするようなもんでもないんだけど。


 どんなことが起きてるかと言うのなら、合成写真が多い。先輩と彼女さんのヤッてる写真が出回ったり、彼女さんが他の男と2人でホテル行く姿にされたり、それを信じた純粋な人が、あの女はヤリマンだって広めたり、私が手を出す前にもう疲労困憊。いつ倒れてもおかしくない、そんな感じだった。


 先輩に怒鳴れてから1週間。私は先輩が買ってくれた傘をさして歩いていた。

 急に路地裏に引っ張られた。

 そこには、先輩が居た。


 先輩は私の襟を掴んで、まーた、怒鳴ってきた。開いた傘が転がってると人は気になるものだ。何があるのかと路地裏を覗き込む。


 カシャン。


 写真をとる人、動画をとる人。


『こんなところで、逢い引きですか~?』

『お前、暴力男でもあるのかよ!』

『浮気してるw』


 とか。タイミングが最高だったかな。

 そこで、私は涙目になったりしたらもう勝ち確定。


 傍観者が私と先輩を引き離す。

 そして、私がゲホッゲホッと咳をしたら完璧。先輩の不評はもっと広がる。

 今まで校内でしか広がっていなかったものが今回の路地裏騒動で外に広がった。


 私の学校はサッカーの強豪校だった。そんな学校のエースといえば、学校の外にもファンは居て先輩をどん底に落とすのは簡単だった。

 ただ、ちょ~っとだけやりすぎちゃったかも。先輩は大学からのスカウトが来てたのに、無くなってしまった。その点に関してはごめんなさい。


 でも、先輩も彼女さんも痛い目を充分に味わったのか、2人は別れて、先輩は私に謝ってきた。

 今からでも付き合えないか?だって。

 まぁ!私は優しいからOKした。


 友達たちからは凄い心配された。

 あの日の動画が回っているから、

『暴力振られてない?』とか、

『何かあったらすぐに話してね!私たちは味方だから!』って言ってくれた。


 私は先輩と付き合えたことに満足していた。

 今日、先輩は顧問に呼び出されたから私は先に帰ることにした。

 そしたら、校門にあいつがいる。元彼女が。


 カッターを持って、私に襲いかかってきた。

 そんなもの、効かないけどね。

 てか、馬鹿でしょ。普通、見えないところでやるよね。こんなところで、人がいっぱい見てる中でよく出来るね。


 元彼女は頭を抑えつけられた。

 すぐに警察もやってきた。

 彼女は殺人未遂で本来ならば捕まるけれど、私は優しいから許してあげることにした。

 元彼女はなんか叫んでたけど、気にしない。


 それにね、刑務所に行ったらもう何も出来ないじゃん。檻に囲まれて私は為す術がなくなる。だったら手元に置いといた方が楽しいからね。玩具は私の近くに、ね。


 元彼女は殺人未遂、そして、ヤリマンの噂が流れ続ける。そこらにいる野蛮なオス猿は元彼女にちょっかいを出し続ける。元彼女は家から出られなくなった。


 そして、1ヶ月後、元彼女が死んだ。

 自殺。首吊り。

 その後、先輩も後を追うように死んだ。


 はぁ。私ってば、罪な、お・ん・な。


 どこかに私を心から愛してくれる人は居ないかな~。

 あ!あのカフェの人カッコイイ!!


 私はまた、彼に恋をした。

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狂愛 夕霧 @yu-4177

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