乳首自慢の勇者の末裔は目立ちたくない!

みやりん

プロローグ〜別にこれは読まなくてもいいです!

魔王アリズ率いる禍々しい異形の魔の民が慈悲の欠片もなく人々を蹂躙し、大陸の国々が強大な天変地異に襲われたかのように文明の痕跡すら見出せない程に、全てを破壊尽くしていく。


何故そのようなことになったのか。


その魔の民を形成するアリズランドの民は、他の国の人間とは異質な姿をしていて、知能もそれ程高くはなかったが、北の大地で独自の文化を築き特に不自由もなく暮らしていた。

しかし、その姿形ゆえに周辺国からの迫害も日に増し、遂には些細な事件でアリズランドの民は、烈火のごとく人間らへの憎しみを爆発させて大量の兵で魔の民を編成し、戦争へと発展してしまうのだった。


当初は魔の民の知能や戦力では、魔法が発達した人間たちの国々相手では全く敵うわけもなく、早々に戦争は終結するとして、北の大地を各国で領土を分割統治する話も出ていたくらいだった。


しかし、彼らは自らの無知が命取りになると知ることとなる。


その知能の低い魔の民は、人知れず最北の山奥で暮らす魔族たちに統治されていて、だからこそ独自文化の中で生活を確立出来ていたのであった。


しかもその魔族は人間より遥かに魔力が強く、特に魔王のアリズは桁違いの力を誇っていた。


その魔の民は、魔王アリズに率いられており、その強大な魔力相手では何者も敵うわけもなく、世界の人々は、もう滅びを覚悟するしかない状態にまで追い込まれて、死が一番の希望と思われる程の絶望感しかないのだった。


幾千もの世界を破壊し尽くしつつ、異形の魔の民はとうとう、東の最果ての美しい島国、天乃国にまで到達する。


東の楽園と謳われるその国は島国で防衛に適しているとはいえ、魔法後進国であったため陥落は時間の問題と思われていた。


小さな島国であるが故に水資源は豊かではあるものの、他の資源は乏しく、それが魔法用の触媒調達の足枷となって魔道士育成が遅々として進んでいなかったのである。


しかし、資源の乏しさを打開すべく魔法用触媒と他の、およそ魔法とは無縁の物をいくつも混ぜることで、意外な威力を発揮できることが判明し、やがて幾つもの調合レシピが開発されていった。


その調合した触媒レメディを、自身の魔力で薬効を発動する魔法は調合魔法と呼称され、更にそのレメディ同士を掛け合わせることで更に魔法効果が激変することも発見されていた。


その功績を大いに喜び湧き立つ天乃国の王は、彼ら調合師を支援し新たな魔法職として確立させ、その者たちによって更なる研究が進められていたが、その中でも山本という調合師は能力が抜きん出ており、後に危険と判断されて禁レシピとされる調合レシピも開発していた。


それら調合魔法は国家機密扱いで秘密裏に開発が進んでいたためか、世界制覇を目前に天乃国にまで侵攻してきた魔の民も当然知ることはなく、容易に陥落させられるだろうと攻めいるものの、野蛮な侵略者は見たこともない魔法で次々と返り討ちに合い敗走を余儀なくされた。


そして剛を煮やしたアリズは自ら天乃国へと向かうのだった。

魔王の名を頂く魔の民のおさはその呪文ひとつであらゆる物を破壊し尽くし、屈強な魔導士を擁する魔法師団のひとつやふたつでは相手にならず、いよいよ調合師山本と直接対峙することとなる。

しかし、その万物をも薙ぎ払う魔力を誇った魔王すら山本の調合魔法の前に平伏す結末に至ってしまうのだった。


こうして人類を滅亡に追いやろうとしていた魔王アリズと魔の民は遂に倒されて400年の月日が流れた。


月日が経つと調合魔法の調合師も、いにしえから存在する触媒魔法や呪文魔法、呪符魔法などの魔導士と同等の魔法職として定着していて、天乃国の王立魔法学校では超難関学科となって毎年エリート魔導士を輩出するにまでなっていたのだった。

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