世界でたった1人の悪魔

リキニウス・セックスティウス

第1話

悪魔は2人に言いました。

「私と取引をしよう。」

痩せた背の高い男は喜んで悪魔と取引をしました。

太った小さな男は悪魔と取引なんてごめんだと言って取引をしませんでした。

2人は別々のところに住まされました。


痩せた背の高い男には大きく綺麗な家、豪華な食事、美しい植物、ふかふかのベッドや可愛い犬まで、なんでも揃っていました。男は喜び、仕事をせずに毎日遊んで暮らしました。しかし男は気付いていませんでした。少しずつ家は小さくなり、食事も貧相になり、植物は枯れ、ベッドは壊れ、犬も死んでしまいました。

何もかもが無くなったあと、痩せた背の高い男は後悔しました。

「ああ、悪魔と取引なんてするんじゃなかった」



太った小さい男には貧相な家、無いに等しいくらいの食事しか与えられませんでした。

毎日死にそうにひもじい生活をしている内に、太った小さい男は後悔しました。

「ああ、悪魔と取引すればよかった」







悪魔は友達がいませんでした。そして名前がありませんでした。悪魔は友達に名前を呼んで欲しいと思うようになりました。そこで悪魔は豪華な生活を与える代わりにその人を食べ、名前を貰うようになりました。毎日素敵な名前を貰います。そのうち王様も、政治家も、医者も、村長も、枢機卿も、聖職者も、みんながみんな、悪魔と取引をしたがるようになりました。悪魔は喜び、みんなに豪華な生活を与え、食べていきました。そして悪魔は大きくなり、世界を食べることにしました。そのほうがみんな幸せになれると思ったからです。その通りみんなが幸せになり、悪魔のお腹の中で暮らしていました。悪魔が名前を呼ばれることはたった一度もありませんでした。

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世界でたった1人の悪魔 リキニウス・セックスティウス @Comet8

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