エクストラ・アース/ゼロ

浅川さん

1章_1st LOGIN

第1話_クリスマスの夜に

2035年12月25日

一本のゲームソフトが世界同時発売された。


フルダイブ型オンラインゲーム【エクストラ・アース/ゼロ】


プレイには超ハイスペックなPCと専用のダイブギアが必要で少々ハードルが高いが、世界中のゲーマーはこの作品が発表された当時から注目していた。


何故なら、それは世界初の[自分が望んだ世界を自ら創造し、プレイできるゲーム]だからだ。


伝説の英雄にも、圧倒的な力を持つ魔王にもなれる。バトルシステムすら好みの仕様にできるのだ。


専用ダイブギアを頭部に装着すると、脳波を読取ってプレイしたい世界観、ジャンルのゲームが構築される。難しいプログラミングなどは不要で全て自動で作成されるというのだから驚きだ。


過去にもゲームを自作するタイプのゲームは存在したが、このゲームが他と一線を画すのは、リアルタイムで自動生成が可能な点だ。

過去の作品ではマップ、キャラクター、シナリオ、セリフ、グラフィック、音楽など、ゲームを構成する要素を一つずつプレイヤーが作成、設定しなければならなかった。


しかし、このゲームはプレイヤーの無意識や願望がゲームという形に落とし込まれることになる。ゲームをプレイ中も世界は更新され続け、進化し続ける。


RPGでもFPSシューターでも対戦格闘でもスポーツでも、何でもできる夢のゲーム。

面白くないわけがない。


しかも世界中のプレイヤーを自分のワールドに招待したり、様々なワールドが混ざり合ったカオスエリアなどもあるらしい。


やはり面白くないわけがない。


しかも、今後もアップデートが予定されていて、第一弾は複数のワールド合同のレイドバトルが予定されている。


もはやこの情報だけで面白い。


とにもかくにも、発売前から大注目されたこのソフトは12月25日になった瞬間の深夜0時に発売され、発売と同時に世界中の人々がこのゲームを購入しプレイした。


彼らの合言葉は「俺たちはリア充だ!」


クリスマスだか性の6時間だか、なんだかしらないが、このゲームをやるために今日まで生きてきたのだ。これ以上の充実があってなるものか。ゲーマーたちは強く結束し、大いに盛り上がった。


そう、僕もその一人だ。

連日盛り上がっていたネット掲示板に発売を祝うコメントと例の合言葉を書き込んでブラウザを閉じる。

ゲームデータは事前ダウンロード済みで、指定された時間になればロックが解除されて、ゲームを起動できるようになる。


このためにPCのパーツを大幅にアップグレードし、専用ダイブギアは3日間並んで手に入れた。30万ぐらいしたけど、ぜんぜん惜しくはない。

ただ、ゲームデータが4TBを超えているのにはたまげた。良かった、32TBのSSD増設しておいて。


僕はベッドに横になり、ダイブギアを起動して頭に装着する。

すぐに網膜認証が行われ、アクセスが許可される。


さあ、行こう。僕のもう一つの世界エクストラ・アースへ。

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