第20話 今度こそ覚醒
「いきまっせー‼」
両手に銀製のフォークを握った騎士団長トマがヌラッチョ伯爵に向かって走っていく。
クイが詠唱に入ろうと大きく深呼吸したときである。
ボクッ…
鈍い音と共にトマが瞬殺された。
「なっ?!」
「ヌッホホホホ。処女のお嬢さ~ん、この程度の剣士では足止めにもなりませんよ~」
伯爵の紳士で一蹴されて気を失ったトマ、もはや戦力外である。
………
少し離れたところではココ&ダレヤネンが狼男を追いかけまわしていた。
「ダレヤネン、腹が減ってるの?」
「どうもそういうことらしいな」
地面を、転げまわる毛のない狼男をブスブスと突き刺しながらココと魔剣ダレヤネン呑気に会話の真っ最中である。
ズブッ…ズブッ…
「どうりで、なんか手ごたえを感じないと思ったよ」
ブスッ…ドスッ…
「俺も、なんか満たされないな~と思ってたんだわ」
ザクッ‼
「ギャワワワン‼」
ズブッ…ズブッ…
「どう? おなかいっぱいになった?」
ブスッ…ドスッ…
「どうかな~、コイツに刺さってりゃ回復するんかな~」
ザクッ‼
「ギャワワワン‼」
「あっ‼ じゃあさ、しばらく刺さっててみれば?」
「そうしてみるか?」
ズブブブブブ‼
「ギャーワワワーーーン‼」
全体重を掛けて力の限り魔剣ダレヤネンを狼男に差し込むココ。
背中から腹に掛けて貫通し地面にまで刺さっている。
「よしっ‼」
ココが魔剣の柄から手を放し額の汗をグイッと拭う。
「コレでイケるのか? ココ」
「しばらくソレで様子を見てみようよ」
「そうだな、ちょっとジッとしとくわ俺」
地面に張り付けられた狼男ダックスは考えていた。
満月のミラクルパワ~による回復と魔剣から吸われる生気のどちらが勝るのか?
「なんか…あったかい…安心感がある…」
満月ミラクルパワ~はジンワリ暖かいのだが、時折ズンッと走る悪寒が気になる狼男ダックスであった。
………
「寄ーるーなー‼」
「ほ~ら、ほ~ら~紳士にご挨拶するのですよ~処女のお嬢さ~ん」
魔法使いなど詠唱をさせなけりゃただの人である。
伯爵は、よ~く存じておられるので、絶妙な距離感でクイを、弄んでいた。
なにせ動きの鈍い連中の集まりアンデッドの中で稀有な存在ヴァンパイアは桁外れの運動能力を持っている武闘派なのだ。
魔法使い独りで勝てる相手では無い。
涙目で逃げ惑うクイ、もう何も考えられない。
「戻ってきたよ~……んぎゃぁぁぁー‼」
すでに倒されていると思い込んで呑気にクイの様子を見に来たココが目にしたものは、パワフリャな紳士から逃げ惑うクイの姿であった。
「オッホッホッホ、これはこれは処女1号ではあ~りませんか~血を吸われに戻ってくるとは…み~な~ぎーりま~すねーーー‼」
満月ハイのヌラッチョ伯爵、美少女JCとJKを前に、もうMAXである。
伯爵の紳士が脈打つように満月にヌラッと照らされる。
月に向かって吠える伯爵‼
「URYYYYYYYYYYYYY」
伯爵の歓喜の叫びに呼応するかのように負けじと叫ぶココとクイ。
「いやぁぁぁぁー‼」×2
相性が悪いとは、こういうことなのである。
………
「力が欲しいか?」
気絶して倒れているトマに語り掛ける声。
「ん…うん?」
「力が欲しいかって聞いてんだ‼」
「…力…欲しいな…」
意識が完全に戻らぬトマがボソッと呟き涙する。
「与えてやろう…誰にも負けぬ力を‼」
プスッ…
首筋に軽い痛みを感じた瞬間
「…アガッ…ガッ…ガァアアァァァー」
トマの断末魔が響いた。
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