第2話 転生とかマジ?
ココは不機嫌であった。
馬車に揺られながら飲んだ紅茶をふとももに溢して「熱ッ‼」って、なったからである。
「まだ付かないんですか?」
「あぁ…まぁ…後1時間ほど」
「一時間!? この国、そんなに広大だった?」
「……そこは、なんとも言えないが…」
騎士団長『トマ・トアッカイ』現役JCを持て余しながら王宮へ…。
早く付いてほしいという思いはココより強いトマなのである。
「はぁ~‼チッ」
もはや悪態は吐かなくなっていたココではあったが、クソデカいため息の回数の頻度は、うなぎのぼり。
目の前のJCがストレスと化していたトマの視界に王宮が見えてきた。
「ココ殿…付いたようです」
この数時間でココは騎士団長に敬語を使わせるまでの人間関係を築き上げていた。
人心掌握とはこうありたいものである。
「なんか…揺られて気持ち悪い…と…尻が痛い…」
馬車から降りると、脳みそがプルンプルンと揺れているような感覚に襲われたココ。
「ココ殿?」
………
「ヒマン王、ココ・ドコデスノン、只今入城したそうです」
「そうか…来てくれたか…ナの国の救世主となる乙女…ではご両親も謁見の間へ通せ」
従者に指示した軽度肥満の王が顎髭を撫でながら複雑な表情を浮かべ隣のババア(占い師)の顔を不安げにチラリと見た。
「大丈夫ですじゃヒマン王、その娘こそ…伝説の騎士『ダレヤネン・ソーレ』の生まれ変わりですじゃ…ケヒヒヒヒッ…」
(ケヒヒヒヒって…魔女じゃん…騙す側の笑い方じゃん…)
謁見の間で王と占い師、そして両親を待たせること30分、ようやく扉を開けて騎士団長トマとココが現れた。
不安げに娘を見る両親と目も合わさずに王の前へ進んだココ。
心なしか足取りはふらつき、顔色が悪い。
入場からしばらくココはトイレで吐いていたのだ。
「そなたが、ココ・ドコデスノンか?」
王の隣で大臣がココに尋ねた。
無言でコクリと頷くココ。
今、喋ったら、また吐きそうなのだ。
「間違いないようじゃぞ、ヒマン王…いい面構えじゃないか、ケヒヒヒヒ」
青白い顔で、どんより立っているココ。
(いい面構え? なんかものすごい顔色悪いけど? そしてまたケヒヒヒって…不安しかねぇよ)
王の顔に心の声が不安色に滲み出ていた。
「ココ‼ ココ‼ とりあえず跪くのよ‼」
小声でココにマナーを訴える母の声など届かないココ、突っ立ったままである。
「ココ・ドコデスノン、まずはご苦労であった」
ヒマン王がココに声をかけた。
「……うん…酔った…馬車酔いした…」
「そっそうか…うん…なんか…スマン」
王の言葉に、また無言でコクリと頷くココ。
許してあげたらしい。
「ココ、そして、その両親よ、良く聞いてほしい…そして、このヒマンを、いや…ナの国を救ってくれ‼」
王が玉座から頭を垂れた。
「王‼」
大臣がその王の態度に驚く。
「よい‼ 我が国は、今やペの国の王、モブ・デ・ゴザールによって脅かされておるのだ‼ このままでは、我が国は、数日のうちに滅ぶ‼ モブ王は…ヤツだけは、この大陸に君臨させてはならん男…頼むココ‼」
コクンと頷き跪いたココ。
「おう、快く引き受けてくれるのか?」
エヴォロロロロ…
王の前で盛大に嘔吐する14歳の乙女ココ。
謁見は一時中断となった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます