第3話 行ってこい大霊界

『ダレヤネン・ソーレ 死す 享年29歳』

 その『ペの国』最大の残念過ぎるニュースは、隣国にまで広まっていた。


「我がペ・ペロンチノ王国の民よ‼ 諸君ら愛され…我が友であり弟であり、ペの国が産んだ英雄は天に召された‼ この国の英雄を奪ったア・ラビアタ帝国の帝王ザッコ・ダ・キッド‼ 俺は、奴を許さない‼ 本日この時を持って、進軍を開始する‼」

 城から城下まで拡声器なんざ必要ないくらいの大声で斧をぶん回して煽る様に国民を、騎士を鼓舞するモブ・デ・ゴザール。

「俺は、あの盗賊上がりを許さねぇ‼」

 自分で殺しておきながら、隣国のせいにして、いきなり攻め落とすという暴挙。

 ソレが、この『ス・パゲテイ大陸』なのである。

「うぉぉぉぉぉーーーー‼」

 血の気の多い国民性なのか、モブ王の演説に沸き立つ、ペ国民。

「ダレヤネン騎士団長、万歳‼ モブ国王万歳‼」

 国民一斉にダレヤネン騎士団長を称える歌を合唱し始める。


『ダレヤネン・ソーレが~洞窟に入~る♪ ランプ係とー、傭兵達のー、後に入~る♪ 洞窟の中には~スケルトン群がる~♪ 五感もないくせに、何かを感じて、襲いかかる~♪ すると突然頭の上から~ 吸血コウモリ襲ってくる~ 何故か不思議なこ~とに♪ 鎧の上から噛んでくる~♪ コウモリの次は巨大なサソリだー スケルトンを潰しながら突進してくる‼ ゆけ~ゆけダレヤネン・ソーレ‼ ゆけ~ゆけダレヤネン・ソーレ‼ ゆけ~ゆけダレヤネン・ソーレ♪ ドンとゆ~け‼」


「全軍進撃ーー‼」

 モブ国王の号令で騎士団はアの国へ出撃したのである。


 同時刻…例の洞窟。

「哀れな…」

 程よく焦げたダレヤネンとアサシンの亡骸は狼やらハイエナやらが食い散らかし、虫が湧くのも時間の問題ってくらい腐りかけていた。

 その亡骸を前に杖をついた老婆が冷たい視線を向けている。

「ダレヤネン・ソーレ…顔は55点くらいだが…モブ・デ・ゴザールよりはマシな男か…」

 杖でダレヤネンの黒焦げの顔を小突き回す老婆。

 しばし考え、老婆は杖をコンッと洞窟の地面に軽く打ち付けた。

「冥界の王よ…ご慈悲を…」

 老婆は跪き小声でブツブツと呪文を唱え始める。

『ぶぶぢまこ すぼとるてずた てめこそつ すろだ』

 30分ほどの時が流れた…。


 額に汗を滲ませ、息を荒くした老婆が洞窟から出てきた。

「おい‼ そこの老婆‼ 今、洞窟から出てきたな‼」

 ペ王国の騎士達が老婆を囲む。

「さて…なんのことでしょう?」

 とぼける老婆に剣を向ける騎士。

「ババア…貴様…アの国の回し者か? ダレヤネン騎士団長の仇‼ アの国の者は皆殺しだー‼」

 騎士にあるまじき言葉を吐いて老婆の首を跳ねる騎士。


 転がった老婆の首が呟く。

「冥界の王よ…ダレヤネンを今一度…復活の呪文は…すでに…」


「おぉ、ダレヤネン、死んでしまうとは何事か…今一度チャンスをやろうではないか、さぁダレヤネン、現世へ戻って無念を晴らすがよい‼」

 ズビシッ‼

 と暗闇の先を指さす冥王様。

 一筋の光がダレヤネンの魂を導く…。


 ………

 時は流れマカロニ歴729年

 ス・パゲティ大陸の7割を手中に収めたモブ・デ・ゴザールの時代である。

 この大陸、ダントツの弱小国『ナ・ポリタン王国』


「おい‼ ココ 今日は何色のパンティだー‼」

 ココと呼ばれた少女、スカートを捲ろうとした男の子の手を捻り上げた。

「痛っ‼ 痛ててぇて‼」

「殺すわよ…」

 静かにドスを利かす少女、男の子を睨みつけ、スタスタと教室へ入っていく背の高い少女。

「クソッ…バーバリアン・ココめ…」


「ババア…呪文を間違えてますやん…」

 暗闇の中で冥王が呟いた。

 どうやら復活には失敗したが…転生はできたようである。

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