SS ドッペルゲンガー
ちょっと思いついたので、またSSを書きました
これからもまた書くかも!
◇
ある日、俺のもとに、とんでもない案件が舞い込んできた。
俺の治療術はちまたでも評判だ。
だからといって……これは……なあ……?
俺の元へ持ち込まれたのは、一体の生首だった。
「おい、なんなんだこれ……」
持ち込んできたのは、知り合いの奴隷商の男。
怪しいルートからいろいろ奴隷を仕入れてくる、変なやつだ。
そいつが今回持ち込んだのは、生首だった。
生首は、顔が誰かもわからないほど、焼けただれていた。
鼻はつぶれ、目はえぐりとられ、歯も抜けている。
正直いって、悲惨だ。
「実はよぉこれ、生きてるんだぜ」
「はぁ……? ほ、本当か……?」
なんと、このボロボロの生首が、生きているのだという。
だが、生首だぞ……?
生首が生きているって、そんなこと、あり得るのか……?
「エルドさん、あんたならこいつを治療できると思ってな。まあ、あとはよろしく頼む」
「まあ、やるだけやってみるよ……」
とはいってもなぁ……。
生首を治療だなんて、そんなこと、できるのか……?
ええい、ままよ。
俺は、生首に回復魔法を施した。
すると、生首の顔が、だんだん綺麗になっていく。
目が生え、鼻がもとに戻り、歯が生えた。
すると生首は、本当に生きていたようで、あたりをキョロキョロ見回した。
そして、口を開いた。
まじで生きてたのか……!
「あれ……? ここどこ……? あれ……私しゃべれるようになってる。目も見える……! あなたが治してくれたの……?」
「あ、ああ…………」
「ありがとうございます……! ありがとうございます……! 一生あのままかと思っていました……」
「あ、ああ…………」
俺は、困惑していた。
なぜなら、その生首の顔、その顔には、見覚えがあったからだ。
少し前に治療した、デュラハンの少女アリーナ。
ここにある生首は、そのアリーナの顔と酷似していた。
「お、お前……名前はアリーナか……?」
「え……? な、なんで私の名前を……?」
「やっぱりな……」
そういえばアリーナは、斬首刑にあったのだと言っていたな。
だが、アリーナは死ねなかった。
そして、アリーナは首無しの身体となったのだ。
なら、その首はどこに……?
そう、首のほうも生きていてもおかしくないはずだ。
ここにいる生首、それこそが、アリーナの生き別れた半身だ。
「実は……」
俺はアリーナに、事の顛末を話した。
「えええええ……!? じゃ、じゃあ私が二人いるってことですか……!?」
「うん、まあ、そうなるな……」
「ど、どうしましょう…………」
「どうしようもないんじゃないか……? 二人に分裂したからといって、どちらかを殺すようなこともできんだろう? 二人の人間として生きていくしかないだろう」
「そ、それはそうですけど……」
「よし、とりあえず治療を完成させてしまおう」
俺は、生首のアリーナに、さらに回復魔法をかけた。
すると、なんと生首から身体が再生した。
これで、この世界に完全なアリーナが、二人存在することになる。
「治療、ほんとうにありがとうございます! だけど……どうしましょう……私が二人だなんて……」
「とりあえず、会ってみるか? それで話し合ったらどうだ?」
「えぇ……!?」
ということで、アリーナを買っていった公爵と連絡をとる。
数日して、屋敷にアリーナがやってきた。
アリーナとアリーナが対面する。
「まさか、こんなことになるなんてね……」
「まあでも、首も生きてたんなら、こうなるか……」
「どうする……?」
「どうしようか……」
二人はなにやら話し合った結果、これからは双子の姉妹を名乗って生きていくことにしたそうだ。
せっかくなので、一緒にいたほうが、なにかと便利だと思ったのだ。
「これはこれで楽しいかもね……!」
「そうね。自分が二人いるって、なんだか素敵。夢のようだわ……!」
これにて一件落着。
アリーナ2号も、アリーナを買って行った公爵の家でお世話になることになった。
これからは二人仲良く、うまくやっていくのだろう。
俺も、自分が二人いたら、って空想したことがある。
一人は昼寝していて、もう一人に仕事させたりな。
だが、物語はこれでほんとうにハッピーエンドでいいのだろうか……?
俺はふと、疑問が残った。
アリーナのもともとの魂は、どうなったんだ……?
それに、もしもだ。
もし、再びアリーナの身体がちぎれることがあったら、その場合はどうなる?
もしまたアリーナが斬首されたとしたら、今度は死ねるのか?
また、首と体にわかれて生きることになるのだろうか。
その場合、また治療すれば、また分裂できるのだろうか。
もしかしたら、アリーナはプラナリアのように、無限に分身できるんじゃないのか……?
そんな恐ろしい発想を、実際に試す気にはならないが……。
だが、俺の中で、ほんの少し疑問が残った。
考えただけで、少しぞっとしてしまう。
あまり深くは考えないようにしよう……。
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【あとがき】
新連載はじめました
一部、奴隷商人の世界観を引き継いでいます
関連性のある世界観のお話なので、きっと気にいってもらえると思います
精神的続編です!
読みにきてくれるとうれしいです
広告下にリンクもありますので、そこから飛べます
https://kakuyomu.jp/works/16817330657256045970
【連載版】魔王様の悪行、善行?いや、どっち!?人間どもの領主がブラックすぎるせいで、占領した相手から感謝されまくるんだが?前世は過労死したので、魔王軍はホワイト経営で生き抜きます。
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