家出中に出会った美人お姉さんと(いい意味で)爛れた関係になってみたら、元クラスメイトまで巻き込んでしまった。
春一
第1話 家出してみた
大学受験に二回失敗したくらいで人生のどん底なんて思うのは、大袈裟だと言われるのかもしれない。
でも、学校と予備校以外の世界をよく知らない俺からすると、受験に二回も失敗することは、お前に生きている価値はないと言われているのと同じくらいの重みがあった。
高校生の間も勉強漬け、予備校に通っても勉強漬け、それ以外の色々なものを我慢して、それでも俺は、目標としている大学に合格することはできなかった。
一応は、国立の医学部志望だった。求められる偏差値もかなり高いところだった。それなら落ちても仕方ないという人もいるだろう。でも、俺はそうは思えなくて、酷く落ち込んだ。
もう一年勉強して医学部を目指そうという気力は沸かず、かといって就職しようとか、せめてバイトをしようという気力も沸かず、全部が嫌になっていた。
誰にも迷惑がかからない死に方、なんてものを調べる時間が増えた。
本当に実践してやろうかと思ったこともある。
でも、本当に死ぬことなんてできないこともわかっていた。
俺には、自殺するような思い切りの良さなんてない。
いっそ生まれてこなければ良かったのにな、と不毛なことも考えた。
両親とも喧嘩が増えた。予備校にもう一年通うのか、あるいは就職するのかと問われ続けて、俺はずっとイライラしていた。両親が正しいことを言っているとわかっていても、俺は正しいことを考えられなくて、客観的に見ればクソみたいな八つ当たりをした。
優秀な弟とも喧嘩をした。小学生のとき以来ろくに喧嘩なんてしていなかったから、随分と久しぶりの喧嘩だった。俺が悪いとわかっていたけれど、だからって、俺が悪いですごめんなさい、これからは気持ちを入れ替えます、などとは言えなかった。
そんな自分が嫌になって、やっぱりまた死にたくなって、けど、死ねなくて。
ぐだぐだするうちに時間が経ち、三月が終わろうとしていた。
そんなある日。
『しばらく家を出ます』
まだ誰も起きていない早朝に、書き置きを残して俺は家を出た。
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