AM9:50 二時限目 : 英語(リョウ視点)

「はい、それじゃあ始めま〜す」

英語教師 松岡ユキエが号令をかける。松岡ユキエは既婚者の四十代女教師であり、最近子育てに疲れているのか授業中によく毒を吐くことで有名である。先輩曰く、十年程前は底辺校で生徒指導をしており鬼のように怖かったらしい。その噂が伝わってきて以降、授業中はいつもピンとした空気が張り詰めている。

「そういえば今日朝学校に来る時にねぇ、あの正門のところに花壇がごさいますでしょ。そこにお花が沢山咲いていましたのよ」

どうやら今日はいいことがあったらしく、やたら饒舌で上機嫌のようだ。普段なら眉間に皺を寄せながらグダグダ愚痴をこぼしているのに。


そんな話を四十五分程聞かされた。もうじきクリスマスだの正月は実家に帰らないといけないだの親戚の子供にお年玉を上げないといけないだの何だかんだ何だかんだぐだぐたうんぬんかんぬん。


気がつけば授業の残り時間があと五分。あと五分でどうすんだ、と心の中で突っ込んでいると

「あら、もう時間がないですねぇ。ちょっとお喋りしすぎちゃいました。じゃあ今日やるはずだった分の長文渡しておきますから、次回回収いたしますわね」


次回って明日じゃねぇか!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る