君にまた逢えたなら

ひいらぎ

第1話

朝、目を覚ます。隣には毎回知らない女が居る。服を着て部屋を出て会計を済ませてからこの静かになった夜の街を出る。

「そろそろこういう生活、辞めないと」

こういって辞めれたことは無く、まだ続いてしまっている。

俺がこうなったのは数年前ー。


「おはよ!翔!」


「おう」

そうやって面倒くさそうに君は返事をする。


「冷たいなあ、翔は!」

なんて言いながら内心では少し傷ついている。


「今日さみーな」

なんて話しかけてくれる日はちょっと嬉しかったりもする。


「だね!最近寒くなってきた」

会話が長く続いたことは無い。翔とは幼馴染だが親同士の仲が良いだけで、親同士が仲良く無かったら幼馴染でもきっと翔とは仲良くなかっただろう。そう考えると少し寂しい。


「てかさ、お前今日部活ねーの?」


「あるよ?どうして?」


「靴、部活用じゃなかったから」


「あ、間違えちゃった」

笑いながら私はそう言うけど、

そんな少しの変化にも気づいてしまう翔はきっとモテるだろうなと考えてしまいやっぱり傷ついてしまう。


「やっぱ昔っから馬鹿だな葵は」

少し馬鹿にしたように笑いながら翔はそう言った。


「今私の事名前で呼んだ!!」


「うっせ。学校着いたからまたな」


翔が名前で呼んでくれたことで心臓がうるさく鳴りだした。顔もきっと赤くなってるが、寒さで何とかごまかせているだろう。

そういえば翔が名前を呼んでくれたのは何年ぶりだろう。小さい頃に1度名前をよんでくれたことがあった気がする。


「おれは中坂翔!!おまえは??」


「わたしは元川葵!」


「葵か!!」


その時以来かな。


「おはよー葵!」


佳奈に話しかけられ、思い出から現実へと引きずり戻される


「おー!おはよう!佳奈!」


朝、下駄箱であった佳奈と一緒に自分たちの教室がある3階まで上がる。


「はああ、1番年上だってのになんで3階まで上んなきゃ行けないんだか」

なんて文句を言いながら上ぼる佳奈が面白くてつい笑ってしまう


「何笑ってんのさ!!」


「ちょっと面白くて!でも確かに疲れるよね」


「そうなのさ!変えてくれたっていいのにね!!」


他愛もない会話を交わしながら教室に着く。


「今日4時限目までじゃん!」


「あー。三者面談があるとかないとか」


「思い出した!大学受験について?とかだっけ」


「そうそう!そんな感じだった!」


「あー、スッキリした」


「なによそれ」


と二人笑いながら席に着く


8時30分。丁度チャイムがなる時間だ


ガラガラと音を立てて先生が入ってくる


「起立!」

と1人の生徒ー。学級委員の西村さんが声を上げる


「礼!着席!」

全員が座ると同時に先生が声を上げる


「おはようみんな。今日は4時限だがしっかり気を抜かず頑張るように。以上」

と先生が話終えると、クラスの大半が一斉に喋りだし、クラス中が騒がしくなる。


「4時限とか最高だけど、時間割が最悪」

と佳奈が言うので時間割を確認すると


「うわ、最悪だね」


今日の時間割は、数学、理科生物、社会地理、英語だ。


「よし!学校終わったらカラオケ行こうよ!!」


「いいね!行こ!」


8時45分。授業が始まった


「ここ、分かる人ー?誰も居ないのか?じゃあ今日は、元川」


私は外を眺めることに集中していた。

4組が外で4チームにわかれてサッカーをしている。試合をしている2チームの中に翔が居た。やっぱり一際輝いている。


「おい元川?」


先生にそう話しかけられ私は顔を前に向けた


「はい!!」

咄嗟に出た言葉だった


「元気は満点だかやる気は零点だな」


「すみません。」


クラスがざわつき出す


「ここ分かるか?」


「分かりません」

そう答えてまた視線を戻す


翔と目が合った気がする。だがすぐ逸らしてしまった。


翔を見ているうちにすごく時間が経ったらしく、授業はあと残り10分といったところだった。


「やっと終わる」


「声に出てんぞー」


声に出ていたらしく、先生が反応した


何人かの生徒が笑いだしクラスがざわつく


授業のキリが良いところで丁度チャイムがなった。




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