第50話:終わりの時
暁の翼を得た古代種の最後の切り札。相打ち狙いのファイナルアタック。
パーティー全体への無属性防御無視攻撃である。これは回避不能で、こちらが確実に全滅する仕様だ。
通常なら、各ヒロインのルートで入手できる特殊アイテムにより復活するのだが、オレにはそんなものはない。
ないので、対策させていただいた。
「ふぅ。助かったよ、フォミナ」
ボロボロになったフロアで、オレは起き上がった。目の前には頭にあった髪飾りがなくなったフォミナがいる。
「良かったですね。ここは計画通りで」
「クラム様のところにちょうどいいアイテムがあって助かったよ」
多くの効果のある残光のティアラだが、一番の目玉は「死亡時即時復活」だ。
ファイナルアタックでオレ達は全滅した。
しかし、フォミナはアイテムの力ですぐに蘇った。
そして、オレも蘇生して貰った。
それだけの話である。
ちなみに転生初期は、誰かの固定ルートに入って、ここを回避しようと考えていた。フォミナが仲間になってくれたおかげで、少し手早くできたかもしれない。
「さて、問題はここからだな……」
「そうですね。この遺跡、まだ動いてますよね」
周囲を見れば、壁を走る紋様は元気に輝いている。まだ暴走状態のようだ。フロアはボロボロで崩れそうだが、まだ現存している。素材が頑丈か、古代機構を破壊しないような攻撃だったんだろう。
とにかく、これを止めないと、多分、帝国中の人が死んだりする。それは良くない。
「やっぱりな。体は残ってる」
「蘇生するんですよね、本当に大丈夫なんですか?」
フロアの中央には、皇帝の遺体があった。
これもゲームと同じだ。ファイナルアタックのあと、ラスボスの体は残る。
ゲームだと、このまま放置されて終わるが、オレ達は別の選択肢を選ぶ。
ここで皇帝には蘇って貰う。洗脳を解いた時のクリスのように。
「大丈夫……のはずだ。駄目でもなんとかなる」
一応、杖を構える。クリスに聞いたところ、本来の皇帝は穏やかな性格らしい。
「いいんですね、マイス君」
「ああ、この遺跡を止められるの、起きた皇帝だけだしな」
ゲームでは、一度古代種が宿ったヒロインが古代機構を止め方を覚えていた。
それを知っているフォミナは、小さく頷いた。
「わかりました。フル・リザレクション!」
遺体が柔らかな光に包まれると、血色が戻り。ゆっくりと目が開く。
「…………」
目覚めた皇帝は、その場で、無言で涙を流し始めた。
「わたくし、とんでもないことをしてしまいました……」
涙をボロボロ流す皇帝。たしか、名前はサーラと言ったか。
「皇帝サーラ。悲しみに暮れているところ悪いけど、この機構を止めてくれないか? 覚えてるんだろ?」
「……わかりました。せめて、それくらいはしなくては」
オレの言葉を聞くとふらふらと立ち上がった皇帝は、SF的な玉座に座る。
両手を腕置きに置くとキーボードみたいなパネルが宙に現れ、流れるような動作で操作を開始。
よし、これで一安心だ。
「…………」
「マイス君、様子がおかしいですよ」
なんか、皇帝サーラが必死の形相でパネルを操作してる。そして、遺跡は止まらない。
そういや、暴走状態だったな、これ。
「と、とまりません! いけない! このままでは帝都中の人の命を吸い上げて爆発します!」
あまりにも物騒なことを言いだした。聞いてないぞこんなの!
「マイス君!」
「緊急停止だ! なんか、どこかぶっ壊せば止まる箇所とかないのか! 動力源とか!」
皇帝サーラが立ち上がってきょろきょろと見回したし、動きを止めた。
その視線の先を見ると、機構の中で壁を走る紋様が集中している水晶みたいな物体があった。
皇帝がそこを指さし、叫ぶ。
「あそこが中枢機構です! 氷結魔法かなにかで冷却して緊急停止後、破壊すれば! でも、超高強度の結界で保護されていて……」
「コキュートス!」
最高位の氷結魔法で、中枢は凍結した。
「あ……そっか、<貫通>をお持ちでしたね」
「理解が早くて助かる。停止したら、魔法で破壊だな? タイミングを教えてくれ」
それから十分後、オレはきっちり暴走する古代遺跡を破壊した。
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