高橋

冷や水を顔に浴びせられ、高橋は目を覚ました。


素っ裸で、柱のようなものに体を縛り付けられている。

首を動かし周囲を見回すが、暗くてよく分からない。


目の前の影が動き、それが人であるらしい事が分かった。


「お目覚めか?」と影が喋った。初めて聞く男の声だ。


「お、お前何のつもりだ?!俺は警察だぞ!警察にこんな事してただで済むと思ってるのか?!」


「知ってるよ」


男は高橋の持っていた警察手帳をかざし、ペンライトをつけて眺めている。


「お前ら警察は身内に甘いからな。民間人ならピクリとも動かない案件でも、身内であれば大騒ぎ。どんな犯罪も身内の失態であれば必死に隠蔽。

だから無能なんだよ、税金泥棒が。」


「な…何だと?!」


高橋は怒りに震えて人影を睨み付けた。


「あれだけ総動員して、俺一人未だ捕まえられずにいる事がそれをよく表してんだろ。

手の込んだトリックなんて全く使っちゃいないのによ。」


ーーーやはり、この男は「水玉男」なのだ。


高橋はそう確信し、身震いした。


「そもそも犠牲者が一人出た時点で、必死に捜査すれば良かったのに…田中武にケツ叩かれてから初めて重い腰を上げたんだからな。呑気なもんだよ。」


ーーー「田中武」の名が出て驚愕した。

彼は確かに政財界に強い影響力のある人物だが、その存在を知る者は少ない。

彼が水玉模様の火付け役である事も。

口止めしていたり、本人が警戒し身を隠しているわけではなかった。

ただ何となく、表に出にくいのだ。

田中武、彼は金があるというだけであり、本人にはカリスマ性も何も無い。目立たないのである。


「何が目的だ…?」


水玉男はそれに答えず、スタンガンをバチバチと光らせ性器に付けた。


性器が焼けるような痛み、骨を砕かれるような衝撃が走る。目に赤い閃光が散った。


数秒の休憩を挟んで、何度かスタンガンを押し付けられた。

正確な回数は覚えていない。


「た、頼む…許してくれ…何でもする、何でもするから…」


高橋は息も絶え絶えに懇願した。


「何でもする?本当だろうな?」


「ああ、本当だ!だからもう止めてくれ!許してくれ!」


本当だった。この生き地獄から抜け出せるのなら、全財産差し出しても惜しくない。


水玉男は電話を差し出した。


「田中武に電話しろ。手掛かりが見付かったと言うんだ。」



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