吉彦

「まずは、ここにしようかな」


まるで商品棚にあるお菓子を選ぶ子供のように吉彦は言うと、インパクトを田辺の頬真ん中辺りに付け、スイッチを押した。


勢い良く回転するインパクトの刃が、田辺の頬肉を突き破る。

インパクトの機械音と田辺の絶叫が車内に響き渡り、鮮血が飛び散った。


「次はここだ」


吉彦は田辺の鼻翼に狙いを定めた。

骨が無く、皮膚も薄いせいかあっさり穴が開いた。


「鼻の穴が四つもできたぜ!」


吉彦はゲラゲラ笑いながら、インパクトを顎に突き立てた。

顎の骨が砕ける感触が掌に伝わる。


田辺は目を白黒させ、絶叫し続けた。


頬、顎、鼻翼、鼻の頭、顔中にインパクトを突き刺したが、額だけは避けた。殺す事が目的ではないからだ。


田辺は白目を剥き、痙攣していた。

気付けば嫌な臭いがする。

失禁し、脱糞までしていた。


「きったねぇな!」


吉彦はその糞便を田辺の口に押し込んだ。


田辺は白目を剥いたまま激しくもがき、くぐもった声を漏らした。


「良かったな、田辺さん。これで大好きな水玉模様といつでも一緒だ、水玉メイクする必要も無いぜ。」


吉彦は手鏡を田辺に突き付け、ニタニタ笑いながら言った。

田辺は鏡に映る自分の姿にショックを受け、絶望の声をあげた。


田辺の水玉模様の顔面を見て、吉彦は気持ちが悪くなってきた。

さっきまでは行為に夢中だったからか気にならなかったが、こうして全て終え正視するとなかなか苦しいものがある。


「てめぇ顔が気持ち悪いんだよ!」


吉彦は立ち上がり、膝を田辺のみぞおちに落とした。

田辺はぐふ、とかげへ、とかいう声を漏らし失神した。


吉彦がハイエースで街まで戻る頃、夜はまだ開けておらず新聞配達員すらいない。


適当なごみ捨て場でハイエースを停め、ごみ袋をそうするように、田辺をそこへ捨てて走り去った。






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