第321話 殺人医師

5年前。

勤めていた医師が故意に患者を殺していたという噂が立ち、潰れてしまった病院。

その医者は罪に問われることなく、どこかへ消えてしまったらしい。

 

今では廃墟になり、心霊スポットとして有名になっている。

夜な夜な、その医者に殺された患者のうめき声が聞こえてくると言う話だ。

 

その話を聞いて、肝試しが好きな俺は興味津々だった。

 

だから、高校の頃の友達を誘って行くことにした。

 

少し時期が外れているせいか、廃病院には誰もいなかった。

 

ゾロゾロと人がいる中で肝試しなんていうのも興ざめだ。

だから、人がいないのはラッキーだった。

 

さっそく友達と一緒に病院内を探索する。

 

友達の方は怖がってビクビクしている。

それがまたなんとも面白い。

 

医師の机なのか、引き出しを開けたらカルテが入っていた。

 


カルテをめくるとびっしりと文字が書かれている。

そこに、修正テープで直されているところを見つけた。

 

どうやら手術に関してのカルテらしい。

 

「これ、殺人医師のカルテかも。きっと、見られたらヤバいことが書いてあって、消したんだよ」

 

俺がそう言ったら、友達は笑い出した。

 

「それは単に漢字を間違えただけだよ。そんなに雑に証拠を残すわけないじゃん」

 

言われてみれば確かにそうだ。

そんな奴なら、とっくに掴まっているだろう。

 

俺は少しがっかりしたが、引き続き、病院内を回ることにした。

 

終わり。











■解説

なぜ、友達は修正される前のことを知っているのか。

それは友達が書いたカルテだった可能性が高い。

そして、もしそうだった場合、この病院で働いていたことをなぜ語り部に隠すのか。

もしかすると、殺人医師は友達なのかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る