第172話 殺人マニュアル
昔っていうか10年前くらいだろうか。
殺人マニュアルって本が大学で流行った。
あの頃は世間では不景気で、俺たちの時代は就職氷河期だなんて言われてた。
そのせいかどうかはわからないけど、その頃は全体的になんか暗いって言うか変だった。
テレビ番組でも心霊系が流行ってたし、終末論とかも毎日のようにやってた気がする。
そんな時代だったせいか、この殺人マニュアルって本はかなり売れていた。
もちろん、俺も買った。
こういう方法なら人を殺せる、ということがたくさん書いてあった。
当時、それを見て面白なーと思った記憶がある。
中にはその本を参考にしている漫画家や小説家もいたらしい。
俺も本に書いてある内容を使って、殺人トリックなんて考えてたりもした。
周りにも同じようなことをしているやつが多かったから、よくトリックを見せ合って、ああでもないこうでもないと議論したものだ。
そんな中、特に仲が良かったEにもその本を見せた。
Eはパラパラと本をめくって「はい、嘘」「こんなんじゃ人は死なない」とダメ出しを始めた。
当時の俺はEのことを空気が読めないやつだなと思っていた。
せっかく、人が楽しんでるのに水を差すなんて、って。
でも、最近、押し入れの中の段ボールから殺人マニュアルが出てきた。
懐かしくなって読んでみたら、確かに嘘ばかりだった。
終わり。
■解説
語り部とEはなぜ、その本の内容が「嘘」だとわかったのか。
二人とも、実際に試していたのかもしれない。
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