第170話 前人未踏

中世の大航海時代初頭。

様々な船乗りがまだ発見されていない未知の地を見つけるため、海へと乗り出した。

 

未知の地で金銀財宝を見つけ、大富豪になったという船乗りの噂は聞き飽きる程流れてきていた。

 

その噂を聞き、一念発起して船を購入して航海を開始した。

しかし、簡単に新しい島など見つけられるわけもなく、やがては交易船として一般的な航路を往復するだけとなる。

 

だが、それでも利益を上げることができ、乗組員を増やし船団として大きくしていくことに成功する。

 

そんなあるとき、男の船は嵐に巻き込まれ、いつもの航海ルートから外れて遭難してしまう。

数日海を漂流していると、遠くに島があるのを見つける。

明らかに地図にも載っていない島だ。

男たちはすぐに船を島へと向けた。

 

島に到着してみると、明らかに人の手が入っていないことを感じさせた。

少なくとも、文明は発達していないことがわかる。

前人未踏の島だということが証明されたようなものだ。

もし、先住民がいれば植民地にできるので、さらに莫大な利益が見込める。

 

男は船員を引き連れ、島の中を探索する。

すると、洞窟内に金銀財宝が置いてある場所を見つけた。

 

男は歓喜した。

これだけで十分な利益を得ることができる。

男は船へと戻り、船員たちに明日の朝に、運び出すことを告げた。

船員たちも大喜びし、その日は海岸で宴が開かれる。

 

宴が終わり、みんなが寝静まる中、男は海岸に寝ころんで星を見上げる。

そして、大富豪になる自分の未来を夢見て、眠りに落ちて行った。

 

終わり。













■解説

前人未踏の島であれば「金銀財宝」があるのはおかしい。

文明を持つ誰かが持ち込んだとしか思えない。

ということは、この島は既に誰かが見つけているということになる。

では、なぜ、「地図にも載っていない」のか。

それは、島を見つけたが、「戻っていない」ということが考えられる。

つまり、この島で死んでいるという可能性が高い。

また、財宝が「洞窟内」にあったというところから、「人間」の存在が疑われる。

おそらく、先人たちはこの島に到着し、先住民の手によって消されてしまっている。

語り部も例外ではなく、明日の朝を迎える前に、先住民の手によって消されてしまうだろう。

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