第168話 ボマー

世間では同時多発爆破事件が起きている。

 

その手口は卑劣極まりなく、子供が多く集まる場所をターゲットにしていた。

爆発に巻き込まれて亡くなった子供の数は2桁を超える。

 

また、犯人が自分の爆弾を芸術品と表現するように、使われた爆弾は手製で高度なものだった。

時限式を好んで使い、制限時間を「チャンス」だと言って挑発する。

その挑発に乗って爆弾の解体に挑戦し、亡くなった爆弾処理班の人間も決して少なくない。

 

そんな中、一人の爆弾処理班の男が犯人の爆弾の処理に成功した。

 

警察はこれを機に、犯人に対して声明を出して大いに煽った。

それは犯人の目を警察へと向けるためだった。

 

幸か不幸か、その作戦は成功する。

犯人のターゲットは警察の施設関連へと変わっていった。

 

警察官の殉職者は増えたが、子供への被害はほとんどなくなった。

それは決して良いことではなく、警察官が亡くなっていることに世間は警察の批判を強める。

 

だが、犯人が警察の施設にターゲットを絞ったことにより、場所の特定がしやすくなったという側面もあった。

そのことで、犯人の爆弾を処理した爆弾処理班の男が次々と爆弾を処理していく。

 

警察はさらに犯人に尻尾を出させるために、爆弾を処理したこと誇張して告知、犯人を煽り続けた。

 

自尊心の強い犯人はその作戦に見事に引っかかる。

 

なんと、男に対して挑戦状を送り付けてきたのだ。

そこには爆弾を仕掛けた場所が記されていた。

さらに以下の内容が記されていた。

 

時間内に爆弾を解除できれば出頭すること。

そして、その爆弾処理には命をかける必要があること。

 

男はすぐに挑戦状に書かれている場所へ向かう。

すると書いてあった通り、爆弾が設置してあった。

 

男は爆弾処理にかかるが、今まで解除できていた爆弾とは別物と言っていいほど、複雑なものだった。

時間が迫る中、淡々と処理をしていく男。

 

そして、ついに最後の工程へと差し掛かった。

原始的な2択を迫られる。

赤と黒のコード。

 

どちらかが解除のコードでもう一つが爆破のコードだろう。

男は時間ギリギリまで悩み、黒のコードを切った。

 

結果、目の前の爆弾は爆発することはなかった。

 

次の日。

犯人の首吊り死体が見つかった。

 

死後、3日が過ぎていたのだという。

 

終わり。















■解説

犯人は爆弾を解除すれば「出頭」すると書いている。

だが、犯人は死体で見つかっていて、「出頭」したわけではない。

ということは、爆弾は「解除できていない」ということになる。

 

また、犯人は「命を懸ける必要がある」と言ってる。

だが、「爆弾処理の男の命」とは書いていない。

 

さらに犯人は男が爆弾の処理の作業に入る「前」に死んでいることになる。

それは犯人が既に「爆弾は処理できない」と知っていたからだ。

 

つまり、最後の2つのコードは爆発するか止まるかの2択ではなく、目の前の爆弾か「他の場所にある爆弾」が爆発するかの2択だった。

これにより、爆弾処理班の男がどちらを切っても、爆弾は爆発することになる。

 

今回、爆弾処理班の男の目の前の爆弾が爆発していないということは、別の場所に設置された爆弾が爆発したことになる。

また、犯人は「子供」を狙っていたこともあることと、ターゲットは警察に関連した場所に絞っていたことを考えると、別の場所に設置された爆弾は爆弾処理班の男の「子供がいた場所」という可能性がある。

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