第138話 好き嫌い

僕は昔からソバが嫌いだった。

 

だから年越しソバも、もちろん嫌だった。

なんで、年の最後に嫌いなものを食べないといけないんだろうと、悩んだりもした。

お母さんに食べたくないと言っても、縁起物だからと言われて、無理やり食べさせられたりもした。

 

でも、そんなある年、僕は衝撃的なことを目にする。

大晦日の日にクラスメイトの莉緒ちゃんの家に、行った時のことだった。

 

なんと、莉緒ちゃんの家では年越しにソバじゃなくてらーめんを作って食べるらしい。

それを見て、僕はお母さんに、うちもらーめんにしようと言ってみた。

だけど、他人の家は他人の家、うちはうちと言われて、ダメだと言われてしまった。

 

そして、今まで気にしてなかったのだけど、給食でソバが出た時も莉緒ちゃんは食べていなかった。

 

ズルい。

 

僕だってソバが苦手なのに、我慢して食べている。

なのに莉緒ちゃんは食べなくていいなんて、えこひいきだ。

 

莉緒ちゃんに聞いてみたら、「食べられない」って言われた。

 

なんだよ、それ。

僕だってソバは嫌いだよ。

 

莉緒ちゃんは食べなくてもいいのに、僕はソバを残したら怒られる。

もう嫌だ!

みんな大嫌いだ!

 

僕が公園で泣いていると、一人のおじいちゃんが話しかけてきた。

僕はそのおじいちゃんにソバが嫌いだから残して、いつも怒られることを話した。

 

そしたらおじいちゃんは僕をアイスクリーム屋さんに連れってくれた。

そこでおじいちゃんにアイスクリームを奢ってもらった。

 

すごくビックリした。

こんなに美味しいと思ったのは初めてだ。

 

これならきっと誰でも食べれるはずだ。

 

僕はさっそく莉緒ちゃんを、そのアイスクリーム屋に連れて行って、僕が食べたアイスクリームを食べてもらった。

 

終わり。














■解説

莉緒ちゃんはソバが嫌いではなく、ソバアレルギーである。

だから、周りからは怒られたりしない。

そして、語り部の男の子がおじいさんに奢ってもらったのはそば粉を使ったアイスクリーム。

この後、ソバアレルギーの莉緒ちゃんがどうなったかは想像に難くない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る