第126話 パイロット

戦時中。

男はずっとパイロットに憧れていた。

 

大空を自由に飛び回るという、ほとんどの人間が経験することなく生涯を終えるだろう経験。

一度でいいから、戦闘機に乗ってみたいと思っていた。

 

しかし、同時に男は、自分はパイロットになれないだろうと理解していた。

 

そんなとき、空軍から偵察のためのパイロットの募集があるのを知った。

男は「自分は大空を飛びたい」だけであり、敵の戦闘機を落としたいというわけではなかった。

そういう点で言うと、男にとってまさに最高の募集だった。

 

なんとしてでも受かりたいと考えた男は応募に募集した。

 

筆記や運転試験では全く問題なく通過することができた。

しかし、男にとって1番の難関が立ちはだかっている。

 

そこで男は軍に所属している親戚を頼ることにした。

どうにかして、パイロットになりたいと頼み込んだ。

 

その甲斐があり、男は応募者の中で一番視力がいいという結果になり、念願のパイロットに選ばれることとなった。

 

作戦の決行日。

男は意気揚々と戦闘機に乗り込み、飛び立った。

 

終わり。














■解説

男が一番気にしていたのは「視力」だった。

そこで、親戚に頼み込むことによって、視力検査を不正に潜り抜けることができた。

しかし、今回の任務は「偵察」であり、「視力が悪い」男にとっては成功する可能性は極端に低い。

また、普通の人よりも視力が悪い男は、先に敵に見つかり撃墜される可能性が高い。

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