第50話 彼女の友達
俺は大学に入って、初めて彼女が出来た。
大学に入るのをきっかけにイメチェン、いわゆる大学デビューしたのが功を奏したようだ。
引っ込み思案で人見知りな俺とは正反対の彼女は、明るく誰にでも好かれる性格をしている。
そんな彼女がなぜ俺と付き合っているのか、今でもよくわからない。
でも、そんなことを悩むよりも彼女に嫌われないように、好きでい続けてもらうために努力するだけだ。
そんな彼女はとにかくメールが好きで、事あるごとにメールを送ってきてくれる。
一度、彼女がスマホでメールを打つのを見ていたけど、尋常じゃないスピードだった。
なにより凄いと思ったのが、画面を見ないで文字を打てることだ。
彼女はパソコンのブラインドタッチと同じだよと笑うが、俺は未だにメールを打つ速度が非常に遅い。
それでも、彼女からメールが来れば、なるべく早く返すようにしている。
そして、彼女には中学の頃からの親友がいる。
その子も彼女と似たタイプで、明るく人懐っこい。
さらにメール好きというのも同じだ。
しょっちゅう、メールを送り合っているのだそうだ。
彼女と彼女の友達と書いているとわかりづらいので、彼女をA、彼女の友達をBちゃんとしておく。
とにかくAとBちゃんは物凄く仲がいい。
俺とAとのデートに、時々Bちゃんがくっついてくるくらいだ。
だから3人で遊ぶことも多い。
よく、俺とAを見ながら、Bちゃんがいいなーと言っていた。
Bちゃんは自分も彼氏がほしいと、よくぼやく。
なかなか彼氏ができないようだ。
Aも、Bちゃんならすぐできるはずなのにと、不思議がっていた。
正直に言って、俺もBちゃんなら逆に選びたい放題なんじゃないかって思っていた。
それくらい、Bちゃんは可愛い。
Aと付き合い始めて1年が過ぎた頃だっただろうか。
俺の身にちょっとした異変が起こり始めた。
捨てアドから俺のアドレスに「好き」と送られてきたり、俺の隠し撮りした写真が送られてきたり、家の前にプレゼントが置かれていたりした。
いわゆるストーカー行為のようなことをされたのだ。
Aは俺に、「モテてよかったね」と言って若干不機嫌になった。
でも、俺が「冗談じゃないよ」というと、誰がストーカーしてるのか調べてみるねと言ってくれた。
Bちゃんは、Aがモテるからその嫉妬でやられたんだよと言い、そのうち収まるよと笑っていた。
ストーカーを無視しながら過ごしていたある日。
俺のスマホに捨てアドから「殺す」というメールが送られてきた。
あまりの急なことに、俺は戸惑った。
なぜ、好意がいきなり殺意に変わったのか。
身の危険を感じて、俺はすぐAに「これから警察に相談してくる」とメールをした。
その準備をしているとAからメールが返ってくる。
開いてみるとこう書いてあった。
#zhTGs
kAg
なんだろう? 打ち間違いかな?
そう思っていると、家のインターフォンが鳴った。
Aが来たのかなと思ってドアの方へ行くと、AではなくBちゃんだった。
「急いで伝えたいことがあるの! 開けてくれる!?」
俺はわかったと言って、ドアを開けた。
終わり。
■解説
Aはメールが好きで、画面を見ないで素早く文字を打つことができるという特技がある。
そこで、Aから送られてきたメールの内容だが、スマホの画面を見ると分かりやすい。
Aはひらがな入力ではなく、間違えて英語入力の画面でメールを打っていたのだ。
(画面を見ないで打ったので、本人は気付かなかった)
「#zhTGs」をひらがな入力で打つと「入れちゃダメ」
「kAg」は「にげて」になる。
つまり、Aは犯人がBだと気付き、語り部の元に向かっていることを知って、慌ててメールを送ったのである。
また、「語り部がストーカー行為をされている」と言っているのに、Bの反応は「Aがモテるからその嫉妬でやられた」と、真逆のことを言っている。
つまり、語り部がストーカーをされているのではなく、Aに好意を持つ人が語り部を排除しようとしていると言ってしまっている。
BはAのことが好きで、語り部に取られたことが許せなかったのである。
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