第33話 僕の親友

僕が5歳の頃、子犬を拾った。

お父さんやお母さんは飼うことを凄く嫌がったが、僕は3日間、ご飯を食べないで騒いだ甲斐があってか、ようやく飼うことを許してくれた。

 

僕は犬にポロと名前を付けた。

ポロは僕にすぐに懐いて、いつも僕の後を付いてきてくれる。

お父さんやお母さんとの約束で、毎日の散歩は僕がやることになっている。

でも、僕はポロとの散歩は好きだから、全然嫌じゃなかった。

逆に、散歩の時間が長すぎて怒られるくらいだ。

 

1年も経つと、ポロはすっかりと大きくなった。

散歩のときにする首輪も新しいものが必要だ。

 

僕はお小遣いを貯めて、ポロのために首輪を買ってあげた。

ポロもこの首輪を気に入ってくれたみたいで、散歩が終わっても外すのを嫌がった。

だから、首輪はいつもポロにしてある。

 

僕もポロのことが大好きで、学校が終わったらすぐに家に帰り、暗くなるまでポロと散歩。

これが僕の1日になっていた。

 

僕はこれでよかった。

学校の友達みたいに、ポロは僕に意地悪しないし、仲間外れにもしない。

僕が失敗しても笑わない。

 

学校で嫌なことがあっても、いつもポロが慰めてくれる。

僕はポロさえいれば、それでよかった。

 

でも、ポロの方はそう思ってなかったみたいだ。

 

ある日、学校から帰ったら、お母さんが泣きながら僕を抱きしめた。

お母さんが買い物の為に家のドアを開けた時に、外に出て行ってしまったらしい。

 

僕は信じられなかった。

絶対にポロなら戻ってきてくれると思って、ずっとずっと、ポロを待ち続けた。

でも、3年経った今でも、ポロは戻ってきていない。

 

それでも僕は信じている。

ポロはきっと、どこかで幸せに暮らしているんだって。

いつか戻って来てくれるって信じている。

 

ポロに買ってあげた首輪を握りしめながら。

 

終わり。

 














■解説

語り部の男の子が言うように、ポロが仮に逃げたとしたなら、戻ってくるはずである。

それが戻ってきていないということは、ポロが生きている可能性は低い。

また、語り部の男の子が買ってあげた首輪は、ポロが気に入っていて外すことは無かったはずである。

だが、なぜ、いつもポロの首に付いているはずの首輪が、語り部の男の子の手にあるのか。

ポロが逃げた場面は、語り部の男の子が見たわけではなく、母親がそう言っているだけである。

この流れから、ポロの首輪は母親が語り部の男の子に渡したというのが自然。

そう考えた時に、母親が首輪を持っていた理由としては、母親がポロを始末した可能性がある。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る