第27話 帰り道
最近は不景気のせいか、物騒な事件が多くなっていて困る。
つい、先日も通り魔によって、女性が殺害されたばかりだ。
しかも、その通り魔は連続でやっているらしく、2週間前と1ヶ月前の事件も同一犯じゃないかって言われている。
いずれも狙われているのは女性とのことだ。
警察は犯人を捕まえるどころか、まだ凶器さえも特定できてないらしい。
男の俺は狙われないだろうけど、絶対とは言えない。
気を付けることにしよう。
とはいえ、せいぜい、夜に出歩かないようにするくらいしかできないが、それも、会社の残業があれば、そういうわけにもいかない。
わざわざタクシーを使ったり、会社の近くのホテルに泊ったりなんてことはできない。
だから、結局は周りに気を付けながら歩くくらいだろうか。
そんなある日。
残業で遅くなり、家路を急いでいた時だった。
茂みから、血だらけの女性が飛び出してきた。
「助けてください! アイスピックを持った男にっ!」
視線を向けると、ガサガサと草が動いている。
どうやら犯人は逃げてしまったようだ。
俺は慌てて、救急車と警察に電話をする。
ほどなくして、警察がやってきて、俺は事情聴取をされることとなった。
あの、血だらけの女性は救急車に乗っていったのであろう、姿は見当たらなかった。
次の日、そのことがニュースになっていた。
犯人が男で、凶器はアイスピックを持っていたこと、また女性の犠牲者が出たことが報道されていた。
これで、犯人は捕まるだろうと、コメンテーターが自信満々に言っている。
よかった。これで、安心して、夜でも道を歩けそうだ。
その日の夜。
駅から出ると、昨日の女性が話しかけてきた。
「昨日、助けてくれたお礼がしたくて……」
これはちょっとした役得だ。
通り魔の犯人に感謝しないといけないかもな。
おわり。
■解説
ニュースでは「また女性が犠牲になった」と報道されているのに、昨日の女性が話しかけてくるのはおかしい。
(草むらで動いていたのは、瀕死だった被害者の女性で、『血だらけ』だった女性は、返り血を浴びていただけ)
つまり、犯人は話しかけてきた女性ということになる。
また話しかけに来たと言うことは、この後、語り部は口封じされた可能性が高い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます