呪われた橋

根ヶ地部 皆人

呪われた橋

 毎年の大水で流される橋に、誰が人柱を立てようなどと言いだしたのか。

 愚かな話だ。礎石と違って人の身は朽ちる。朽ちれば崩れ、隙間が空いて水が流れ込む。

 そうなれば、また橋は流される。

 であるにも関わらず、また流された橋を再建するべく人柱が立つ。

 ある時はくじ引きで村人の中から選び、ある時は通りすがりの旅人を縛り上げ、毎年の大水で流される橋に、毎年人柱をたてる。

 ああ今年も駄目だった。

 やはり今度も流された。

 次はどうする誰にする。

 もはや変えられぬ法則であるかのように、人柱を立てては橋をかけ、大水でまた流される。

 誰も気づいてはいないのだ。

 大水が橋を流すのではない。

 橋が人を喰っているのだと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

呪われた橋 根ヶ地部 皆人 @Kikyo_Futaba

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る