「めしどこかたのむ」みたいなノリで殺し屋対策を訊いてみる

身の回りの人にあまり言えない相談をしたいときに意外と便利なのが匿名掲示板。本作の主人公も困った状況になって匿名掲示板の住人を頼るのだが、その困った状況というのが「殺し屋に何度も殺されて同じ一日をループし続けている」というもの……うーん、匿名掲示板に相談してどうにかなるもんかな、これ……。

しかし主人公が頼った掲示板には、やたら理解力が高い考察厨、不確かな情報の真偽をハッキングで明らかにする特定班、たまたまその日主人公の近くいた人……などなど様々なスペシャリストが集っていた! かくして主人公は彼らの助言を受けて、目の前の問題を一つずつ解決していく!

作品全編が掲示板内のやりとりだけで構成されているのが大きな特徴で、主人公は生きるか死ぬかという状況なのに、会話のノリだけは基本匿名掲示板のノリで展開されていくのが読みやすくもいい味を出している。また主人公以外は記憶を引き継げないので、ループのたびに状況を説明し直す必要があるのだが、この状況説明がどんどん上手くなっていくのも面白い。また話が進むにつれて主人公や掲示板の住人たちの意外な秘密が明らかになっていく過程も楽しく、軽いノリで最後まで一気に楽しめる一作だ。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=柿崎 憲)

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