第5話 さらに進むこと第24回目の授業。まだまだ苦労しているようです。

 迎えること24回目の授業。まだまだ使える語彙が少なくて言いたいことも言えません。


 それでも教育のため、先生からの質問は手加減なしに襲ってきます。


 今日は、「ある会社で採用面接を行った。応募者2人の中から1人を推薦する」という宿題についてのトークから授業は始まりました。

 いろいろとダメ出しをされた後、話は自分の体験についてへと発展。


「あなたは、採用面接をして応募者の選考をしたことはある?」

「いまはないが、何年か前にいたタイの会社ではしました」

「なぜ今はしないの?」

「今の会社は大きいので、採用部署があります。タイの会社は小さいので自分でやりました」

「その仕事は好きな仕事なの?」


「その仕事は好きな仕事なの?」


 はあ?


「その仕事」ってなんやねん? 採用対象の仕事のことなのか、採用面接をするという仕事のことなのか?

 採用対象の仕事だとしたら、そもそも面接官側が好きとか嫌いとか言う立場なのか? 意味はあるのか?


 面接をすることを言っているなら、そんなもん好きとか嫌いとかでやるものなのか?


「好きでも嫌いでもありません」

「いやでも、あなたのことだから。好きか嫌いかあるでしょう?」

「仕事は仕事なので」


「あー、そうなんだー」

 

 イタリア人は、仕事でもこれは好きとか嫌いとか個人の見解が入るのだそうで。


 そんなん知らんわ!


 今日の授業はお買い物の日常会話。


 例題としてスーパーで買い物をする男女の会話が出てきました。


「リンゴを買って、バナナを買って……。ジャガイモも買おうか?」

「いらない。ジャガイモはまだ家にあるわ。でも食器用洗剤とビスコッティがないの」


 おかしくない? この会話。

 野菜売り場で、洗剤がないって? 売り場変わるまで待てんのかい!


 イタリア人はこうなんです。あれはあるけど、そういえばこれがないと思いついたら、言わずにはいられないのです。

 先生は、そう言う。


 子供か?

 空気読まれへんのんか?!


 会話はなおも続きます。


「お水も買わなくちゃ。ガス入りがいいわね」

「僕はガス抜きがいいんだけど」

「ガス入りのお水ください」

「ガス抜きがいいなあ」

「じゃあ、ガス入りを一本とガス抜きも一本買うわ。全部でいくら?」

「今日もたくさんお金を使ったね」

「イタリアは物価が高いから。品質も良いものを買わないとね」


 お前が、あれもこれも買うからじゃろうがあー!

 何年つきあっとんねん?! ツレの好みぐらい把握せえや!

 今日はガス抜き、今度はガス入り買おたらええやんけ? なんで、いっぺんやねん!


 と、頭の中に関西弁のツッコミがこだまする、エキサイティングな授業でございました。

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