やめて!私の為に争わないで!


その刹那、いや、それを更に16等分に区切ったような短い時間。

とても古い表現でこれを雲の刻と書いてうんこくの間というそうだが…

とにかく一瞬だ。という長い文を想像する時間があるのは私だけだろう。


彼等は残像が見える勢いで動きながら、時折私の周りで火花が飛んでいる。

とんでもねえ物音がしそうなもんだが、衣擦れの音が多少激しいくらいで部屋には強めの風が吹いている。なんせ三重に走っているので寒い。


パンクロック天使様はどうやら針と翼で戦い。

黒い耳羽の天使様は短剣で私の事を刺そうとしているようだった。

トラックは何処へやったというのだ。

彼らはやはりあれだけの車重を横転させるほどの膂力があるのだろうか。

と思うと遠くの方で大爆発炎上する音が聞こえた。

どう聞いてもそういう風に聞こえたのだからしょうがない。

…何かがぱちぱちと燃える音がする。どうなったのかは想像に難くない。


しかしこれはアレだな…正にあのセリフを言うべき所だ。

すぅっ…と息を吸い込んでたっぷり三秒後。



_人人人人人人人人人人人人人人人人人人人_

> やめて!私の為に争わないで!”!”!” <

 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄

(深夜に怒号)


うむ、現実世界だとちょっと恥ずかしいが、元からそういう理解はあるのでたぶん大丈夫だろう。(大丈夫じゃない)それに一生に一度は言ってみたかった。思ったより濁った声ではあったが。(増えてゆくCVの負担)


たちまちどたばたと足音が聞こえて来た。しまった母さんに聞かれた。

また一時の恥が増えてしまうのか。

しかしそれももう楽しめる余裕が今の私にはあるぞ。(一生の恥)


「てめえ!喉やったって言ったろ!!いきなり叫ぶんじゃねえ!!」


「…頭がぐらぐらする、本当に人間?」


…ア”ー私はどうやらまたやらかしてしまったらしい。

こういう経験が人に比べて異常に多いような気がする。ちょっと考えなしだったか。それともまた考えすぎたのだろうか?

どうやら私の喉は治りかけで、それで濁った声だったようだ。暫く黙っとこう。


そしてその日は多分丸く収まった。…よなこれは。

お母さんが部屋に割り込んで来てイケメン二人が暴れたという事実に卒倒しかけたが、私が喉を抑えたりボディランゲージで必死に二人が悪い人ではない事を伝えるとその内落ち着きを取り戻した。


…異常に疲れた。どうやらやはり体力は落ちてしまったようだ。黒い天使様がアズくん様になんやかんや言っていたが、いずれ引き返していった。そうして私はもうひと眠りする事にしたのだった。…火の音まだ聞こえるな。家は大丈夫かな。

どうやら一応大丈夫な燃え方らしかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る