ラヴァーハッピー、アンドフォーリン、ダウン。
ああ、彼の横顔は美しい。
彼の前では私など借りて来たクズだ。
猫のように可愛げもなく。ゲスのように自主性もない。
…ところで堕天使様。
「ァ?なんだ?」
これって落とすつもりですよね?
「…」
ああ、やっぱりそうなんだ。私、こんなに高い所ほとんど見た事ないや。
「…それで?別に落としたりしねえけど。」
実は結構すくんでるんだけどさ
「…」
いつもより、声が出るような気がするんだ。
「はあ?なんだそりゃ?」
「ぁー、テステス、アー」
「…」
「あのさ、落としてもいいよ。俺の事。」
「…!?」
「俺さ、自信があるよ。俺なんか死んでも何にも問題ないの。」
「ふざけてんのか…?」
「ふざけてないよ。むしろ俺が結構怒ってる。」
「…やめてくれ、何言ってんだお前。収拾が付かねえ。」
ああ困ったな、こういう時どうしても相手に言葉が伝わらない。
頭の中じゃ随分とじょうずに作文できるのに。声も本当はでかいのに。
「…」
…念話ってすごいな。
「言いたい事があるならとっとと言ってくれ、聞くだけ聞いて落とす。」
「…じゃあさ。一個だけ聞いて欲しい事があるんだ」
これがこうであーなって、
つまる所要するに彼は神を私怨と分かってるけど恨んでてでもやっぱり憎みきれなくて、それってつまり自分がお父さんに思ってたのと一緒。あとは…
「…あんまり時間はやらねえからな」
この天使様は、私を〇す十分な動機がある。そして、その為に目立つ事は避けたい。だから唯一飛べる”向こう”に飛んで、その途中に事故を装って〇そうとしてる。
「…」
そんで、神とやらは既に重大な過失を二つ犯してる。一つは勿論アズ君を俺なんかにやった事。もう一つは…俺がそれに怒らないと思った事。
「…」
”向こう”に戻る提案をしたのは私だけど、翼がなくて不便だからすぐに同じ事を思いついてて、それで都合が良いから便乗してた事。
「あー、気分が悪くなってきたな。手が緩んできた」
いや怖いが。風を切って飛びながらそれはめっちゃしがみつくが。
「はっやっぱ死にたくねえんじゃねえか」
そうかな…そうかも…
「所詮人間なんて頭の良いサルだもんな、見た目で人を好きになったとかほざいて、自分はマスかけりゃ十分なんだろ。」
うん
「いや「うん」じゃねーっよ人が折角こうやって馬鹿にしてんのに」
でもさ、ただの事実だもの。
「…はーつまんねえな、引き剥がすのすら面倒になってきた」
ええしっかり捕まえときますよ。ところで…
「なんだよ、さんざん頭ん中で喋ってんのにまだ言う事あんのか?w」
「人を殺した事ないよね?」
「あ”?」
おおこわいこわい。随分とトゲが出てらっしゃる。
「そのトゲ立ててんのは誰だ?いい加減冗談抜きで落とすぞ?」
うん、落として良いって。こんなやつ。
「あー気持ち悪い気持ち悪い、なんでこんなに気色悪くなれんだよ、クサいを通り越して寒気と吐き気がしてきたわ」
あのさ。だったらなんで落とさへんの?
「はぁ?もう分かってんだろ?バレたら問題だから向こうに着くまで落とせねえんだよ。」
そうじゃなくてさ。”扉”が出せるならそうするだろうし、降りて来た扉はもっと向こうだし、何よりなんで会話に付き合ってくれてるの?
「はー脳内までお花畑かよ、向こうにも扉があって、てめえなんざいつでも潰せるから遺言聞いて面白がってからにしようと思っただけだよ。」
ほーん。そんで遮断できる念話まで聞いてくれて、なるべく思いも汲んで、元の扉より人目が付くところでわざわざ遠い所に飛んでくれて、さんざん気色悪い言葉を聞かせたのにまだ期待してくれてるんや。なるほどなるほど。
「…ッ!」(振りほどこうとした)
「!」(ちょっとずり落ちた)
「だあああ!やめろ!落ちろ!」
「はははは」(全く余裕はないが思ったより保持出来て喜んでいる)
だってそうだろう?
本気で殺す気なら話なんかそもそも聞くはずもない。
念話も遮断できる筈なのにどうしてか別の言葉を聞きたがっている。
”堕天した後でも”私を片羽根で持ち上げられるような、
トンデモ筋力の持ち主がわざわざ空を飛ぶ様な目立つ事をする必要がない。
何より人を抱えて飛べるなら、今すぐ振りほどく事も本気なら出来るはずだ。
これはつまり…
_人人人人人人人人人人人人人人人人人_
> 恋人とかじゃなくってもさ!!!! <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
「うぉ声でか!?」
_人人人人人人人人人人人人人人人人_
> <
> 脈アリって事だよね!!!!!! <
> <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
「ドやかましいわああああああああああああ!!!!!!!!!!!?」
「あのさ!!!!!!!!!!!!!!」
「やめろ!!!!!離せ!!!!!!!!!」
「俺君が好きやねん!!!!!!!!!!!!!!!!」
「消えろ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「ツンケンしてるのにピュアな所とか!!!!!!!!!!!」
「黙れ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「曲がった事が嫌いで怒る所とか!褒められて照れちゃうの嫌な所とか!!!」
「うるっせええええええええええええええ!!!!!」
「すっごくわかるよ!!!おんなじ事考えてたもん!!!!!!!!」
「うる」ドゴォ「あっ」
「え?」(そんな事ある?)
彼は!!!!!!!!!!!!!!!
開いてない扉に!!!!!!!!!!!!!!
揉み合いになったまま激突し!!!!!!!!!!!!
主人公の貧弱な握力は随分頑張ったがついに底を尽きたのだ!!!!!
そして!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「…フッ…」
我らが主人公は!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
余りの恐怖に意識を失った!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
その死の直前までを記憶に収める事を本能的に拒否したのだ!!!!!!!!
「おい待てよ、そんな…!」
その寸前に、主人公は確かに見たんだ。
自分を助けようと、全速力で手を差し伸べ堕ちる天使を。
恐怖と安心が、同じ顔をしているのを。
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