伯爵令嬢の付き人になったがこの貴族社会は付き人のオレに厳しすぎる

@morukaaa37

プロローグ





 なんでこんなことになった………


 俺は、自分の服装を見て、そう心の中で呟いた。


 「いや、似合ってるぞ、クロス!我が、ハワード家に相応しい服装だ!これからは、仕事の方も頼むぞ!」


 俺の前で、マッチョのおじさんが何やら言っている。


 この筋肉だるまは伯爵家当主、ハワード・ローズ。優秀な魔術師でも、騎士でもあるらしい。


 そんな意外とすごい人なのだが、、


 このマイペースジジイは、脳を筋肉で潰されたのだろうか。よりによって、俺にこんな仕事を押し付けるとは……。


 俺は、確かめるように、もう一度服を見る。


 白いシルクのシャツの上に、無地の黒ネクタイ。更にその上から、膝ぐらいまで垂れ下がっている黒のモーニングコートを羽織らされ、ズボンも上と揃うように黒一色のパリッとしたものをはかされた。


 この服装を再度見て、俺はまた、憂鬱な気持ちになる。


 ほんとに、なんで俺がこんなことを、、、


 そんな俺の気持ちを少しも察することもなく、このジジイは俺の肩に手を置きにこやかに言った。



 「付き人として、娘、マリアのことは頼んだぞ、クロス!」



 俺は、引きつりそうになる顔を抑える。


 俺がお嬢様のことを苦手に思っていることをコイツは知らないのだろうか。


 「ていうか、なんで俺なんですか。他にも使用人はいるでしょう。」


 「使用人に年齢がちょうどいい奴がいなくてな。お前なら、娘の付き人もこなせるだろ。ん?いや、クロス。娘と同じってことは、お前今、16歳だろ。そろそろ、学院に入るか、働くかしないといけないぞ。付き人にならないで、何するつもりなんだ?」


 「………………なるほど」


 はあ、まったく、そこまで言われたら、仕方ないな


 これでも、このジジイは俺の恩人である。


 ここで、拒否できるわけがない。


 別に、先のことを考えてなかったからとかではないからな。


 まあ、しかし、あのお嬢様の付き人か、、


 嫌な予感しかしないが、面白そうではある。


 あいつの付き人になるのに、気乗りであると思われるのが、なんとなく癪なので、俺はしぶしぶと言った形でこう言った。



 「まあ、やらせてもらいます。付き人。」

 


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