GAI/Gingerly Abominable Incendiary

きょうじゅ

鎧袖一触

がいしゅういっしょく/鎧の袖に触れる程度の簡単さで相手を打ち負かす


 そいつは11月5日、ガイ・フォークスの夜祭の日に現れた。厳密に言えば、初めて存在を観測された。


 どこで生まれたのか。どこから来たのか。誰も知らない。

 何故生まれたのか。誰が生み出したのか。誰も知らない。


 だが、一つ確かなことにそいつは、世界を焼き尽くすために存在した。


 そいつは、炎の化身そのものだった。


 炎は渦を巻き、巨大な、二足の巨人の姿を取った。


 いや。


 巨人と言うよりは、怪獣と呼ぶべきか。


「わたしがあの者に名を付けます」

「じょ、女王陛下」

「Gingerly(狡猾にして)Abominable(厭うべき)Incendiary(炎を放つ何か)。GAI。以後、そのようにあの者を呼称するように」

「イエス。ハー・マジェスティ」


 宮殿が焼け落ち、かつて日の沈まぬ帝国と呼ばれた国家が地上から消えたのは、それからわずかに半刻ほどのちのことであった。


 炎は地下に通されたトンネルを抜け、大陸へと渡った。

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