氷姫と名高いクラスメイトを痴漢から助けたら、俺の前だけデレる甘デレ姫になった。
でずな
第1話 氷姫
俺こと
喋る内容は必要最低限。
誰に対しても淡白な返事。
感情が乗ってない冷たい視線。
でも、誰よりも人も思いなので氷姫と言われている。
そんな二つ名だけが独走する人物の名は、
こんな知っているが、俺は遠目で何度か姿を見たことがある程度でしかなく、一度も喋ったことがない。
このすべての情報は、
俺の親友がいつもいつもいつも『いつか告白するんだ』と言いながら、聞いてもないのに語ってくるので知っている。
その語りが始まったのは、高校生活が始まってすぐの春。
あれから時間は経ち、今の季節は夏。
体育祭や夏祭りなど、夏の一大行事が終わった最近の学校は落ち着きを取り戻している。
というか、今は絶賛夏休み中。ちなみに終わりが近い。
あと数日で地獄の学校が始まってしまうのだ。
宿題は終わっているので、学校が始まる日までダラダラしようか……。
と、思っていたが。
ゴロゴロして蓮とゲームしてゴロゴロして終わりの夏休みなんて嫌だと思った俺は、駅のフォームにいた。
手に持っているのは、いつも行っている学校と逆方向への切符。
なんとなく知らない方向の切符を買っちゃったけど……本当に全く知らない地名だ。
「どうしよう」
勢いで切符を買っちゃったのも問題だけど、俺が今部屋着のジャージ姿だということも問題だ。
ジャージのせいで、周りにいるおしゃれな格好をした人たちから全身を舐めるように見られている。
こういうときコソコソ話してるのを見ると、俺のことをバカにしてるんじゃないかって思っちゃう。
……まあ周りの人に比べるとバカにされるような服装だから仕方ないけど。
「お出口は左側〜」
って、周りの目を気にしすぎてたせいで電車が到着してたのに気付かなかった。
俺が持ってるこの切符の場所は、かなりの距離電車に揺られないといけないからいい場所に座らないと。
「すいません」
俺は駄弁りながら電車に入ろうとしてるおしゃれな人たちをかき分け、角の席に腰を下ろした。
「ふぅ」
元々電車に乗ってた人から変人を見るような目を向けられてるから目を合わせないでおこ。
「でさぁ〜うちが行ってあげたの」
「まじで!? いい女すぎぃ〜」
少し距離が空いた隣から聞き覚えのある陽キャの声。
たしかこのおしゃれな女子二人は……同級生だ。
気づかれたらいじられて面倒くさそうだけど、あの人たちは俺のことなんて視界に入ってないっぽい。
ガタンガタン。
何事もなくいい感じに事が進んでいるな。
……と、思っていたが。
「はぁ」
俺の目が勝手にドアの近くに立っている女性に向いていた。
やばい。
目があったら気まずい。
視線をずらそうとしても、自分で分かるくらい釘付けになっている。
青色の絹のような長髪。シュッとした目元。鼻筋がくっくりとついており、神のお気に入りなんじゃないかというほど顔のパーツが美少女のそれ。
着ているのは真っ白な透明感のあるワンピース。
ワンピースが着せられていると思うほど、完璧なスタイル。
「氷姫」
学校で見るときと随分雰囲気が違ったので気づかなかった。
なぜか今はあまり氷姫という印象を受けない。
どちらかというと、可愛い格好をしたお姫様だ。
もしかして浅木さんは学校だと、自ら氷を演じているいるのか?
有り得そうだが……そんなこと、一切接点のない俺には関係のないこと。
「ふぁ〜……」
普段本能丸出しでゲームばっかりしてたせいで、考えすぎて疲れた。
いい具合に首元に太陽の光が差し込んできてて体がポカポカしてきた。
このままじゃ一眠りしちゃいそうだ。
いや、到着まで時間かかるから一眠りしてもいいのか。
そう思ったら途端とまぶたが重く感じる。
起き続けて眠いまま夏の思い出を作るのは無理だし……ここは休憩といこう。
俺は最後に浅木さんのことを視界に入れ、ゆっくりとまぶたを閉じた。
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