呪われた橋

月井 忠

第1話

 僕は彼女を誘って噂の吊り橋までやってきた。

 彼女を一人だけ連れ出すには、山田の手助けが必要だった。


 僕たちは男女二人ずつのグループで、この山に来ている。

 予め作戦を立て、山田には相談しておいた。


 山田には感謝しかない。


 さっそく、彼女と吊り橋を渡る。


 彼女は怖がっていた。

 自然に手がつなげた。


 心臓は勝手にどきどきと鼓動を早める。

 まさに、吊り橋効果そのものだ。


 噂は、この橋の途中で告白すると確実に成功するというものだった。


 本当は噂に頼る必要はない。

 彼女が僕に好意を抱いていることは知っている。


 でも、噂の後押しがなければ踏み出せないのも事実だった。


「好きです。付き合ってください」

 僕は立ち止まって、彼女の目を見る。


「うん。いいよ」

 こうして僕たちは付き合うことになった。


 しかし、僕はこの橋の本当の噂を知らなかった。

 正確には前半しか知らなかった。


 僕たちが付き合ってしばらくして、彼女と山田がやっている現場に出くわす。

 やっているとは、つまりそういうことだ。


 僕たちは別れた。


 本当の噂はこうだ。


 吊り橋の途中で告白すると確実に成功する。

 その後、確実に寝取られる。


 噂を前半しか教えてくれなかったのは山田だ。

 つまり、初めからそのつもりだったということだ。


 聞く所によると、噂を知った上で告白するねじれた性癖の持ち主もいるらしい。


 僕も次に告白するときは、あの吊り橋でやろうと思っている。


 僕の性癖は歪んでしまった。


 あの橋は呪われている。


 いや、本当の自分を見つけたのだから、違うのかな?

 彼女とは別れたけど、山田とはズッ友だょ?

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呪われた橋 月井 忠 @TKTDS

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