第55話 新たな探索
ほかの二人は、いったい誰なのか、武たちは、ああでもない、こうでもないと話し合ったが、結局、藤原の祖父の手紙を、もっと調べてみることになった。
〝こだま憑き〟の呼び出し方を知っているのは、祖父に手紙を送ってきた人物か、その周辺の人物としか考えられない。武の故郷にあったような、〝こだま憑き〟の秘法を、連綿と現代にまで伝え続けている団体が、この辺りにもあるのかもしれない……。
藤原の家から戻ると、コンビニ弁当を食べながら、茂と一緒に、携帯で撮ってかえった藤原の写真を拡大して読んだ。
読んでみてわかったのは、〝こだま憑き〟のことを記述しているのは、一人だけでなく、複数いるということだった。
藤原は、祖父の手紙の中で、いちばん具体的に〝こだま憑き〟になる方法を書いているものを選んで、実行に移したのだ。
が、それ以外にも、〝こだま憑き〟のことを書いてきている手紙はあった。武と茂は、複数の怪しい手紙を選び、その送り手を、訪ねてみることにした。
学食で、岩瀬と落ちあった。
岩瀬も、藤原家で写真にとって帰った手紙を分析していたようで、互いにみつけたことを、報告し合った。
岩瀬も、武たちと同じ結論に達していた。
武たちと岩瀬で手分けして、手紙の送り主の所在地をまわることにした。
「ひとりで、あぶなくないのか?」
武が心配して訊くと、
「ああ、藤原さんも一緒にまわってくれる。まだ、仕事も決まってなくて、暇みたいだし……」
藤原さんが一緒なら、大丈夫か。
この街には、小さな工場がたくさんある。藤原さんが、本気で職を探せば、すぐに勤め先はみつかるだろう。それまでに、〝こだま憑き〟たちを、すべてみつけられるだろうか?
藤原さんは、どうやら、あの家を相続することに決めたらしい。相続税は、なんとか分割して、少しずつ払っていく予定だという……。
前に住んでいたところには、深いつきあいをしていた者は、いないらしく、今回、知り合った武たちとの交流を、意外に大切に思っている様子だった。
いま持っている財産は、中古の軽四自動車だけなので、それを売っぱらって税金を払う足しにするそうだ。――もっとも、相続税の全額には、まったく足りていないので、生家を維持したいと思っている伯母の援助を当てにしているとも、いっていた。
次の日曜日、武は茂を連れて、調べた手紙の住所で、比較的近くに住んでいる郷土史家を訪ねた。
斎藤という、その郷土史家は、運よく手紙の住所の家にいてくれて、武たちの話を、驚きながら聞いていた。
斎藤は、腕組みしながら、しわだらけの顔をゆがませた。
「やはり、〝こだま憑き〟は、実在したのか」
「――信じてもらえるんですか?」
あっさり、肯定してもらえたので、武は驚いて大声を出し、訊き返した。
「信じるとも、我々、『歴史探訪の会』のメンバーは、皆、信じるだろう。先祖の残した記録が正しい事を、信じているからな」
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