第22話 対決

 二郎とともに、道場への帰リ道を歩いていると、すれ違う町民に顔見知りがいて、おめでとうございます、御苦労様でした、と声をかけてくる。

 もうすでに、千代たちの道場が勝ったことは、広まっているらしい。小さな藩だし、話題にとぼしいので、こういうことが広まるのは、あっという間だった。


 試合に勝ったのだ。

 ようやく、喜びが湧き上がってきた。

 二郎の手を強く引っ張る。早く帰って、祖父に知らせなければ……。


 二郎をせかし、急いで歩いていると、道場までの道のりのなかほどにある、竹林にさしかかった。

 千代は立ち止まった。

「姉上?」

 今度は、逆に二郎が千代の手を引っ張った。

 が、千代は頑として動かない。

 眉をよせ、竹藪の向こうを窺った。

 何者かが、前方の竹藪のなかにいる気配がした。


「隠れて!」

 千代は二郎をそばの竹藪に隠れさせると、ゆっくりと歩を進めた。道にはみでて、目線をさえぎっていた竹のとがった葉を払いのける。

 竹の枯れ葉が地面全体に敷き詰められた、少し広い空き地に出た。

「誰?」

 千代は、繰り返した。

「誰だ? ……出てきなさい!」


 一拍おいて、隠れるのをあきらめたのか、がさごそと音をたてながら、ふたりの侍が出てきた。

 ひとりは、森幸四郎だった。

 もうひとりは見たことがない顔……たぶん、向こうの道場の門弟にちがいない。白っぽい顔色の、まだ二十歳をこえてはいないだろうと思われる若い男だった。

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