第12話 導師会議は踊る
季節外れの大雨・暴風・雷警報が発令されている。噴火はさすがに止めた。
「魔王だ! 魔王に違いない! あんなことをする奴なんて、俺は勇者だとは断じて認めないぞ! 希望を与える? 平和をもたらす? 何言ってんだ!? 俺の希望は潰えた! 平和など望むべくもない! もはや俺の世界は滅びたんだ!」
「ゾッとするわ。あんな奴だとは思わなんだ。昔からいろいろと面倒を見てやってきたというに、恩を仇で返すとはな。よろしい、ならば戦争じゃ。勇者じゃと? フン、笑わせる。あやつはワシの真の恐ろしさを未だ知らぬ。知った時にはもう遅いわ。いや、知覚を認識する前に全ては終わる、覚えておけ……いやいや、覚えることすら叶わんのか……ああ楽しい、こんな気持ちになったのはじめてじゃ……」
「苦しい……あのお方のこんな姿を私は見たくなかったわ。どうしたらあんなに取り乱してしまえるのかしら。私はいいのよ、いつものことだから。それが私、そう、私は雷の化身、あのお方の怒りを体現し、あのお方を苦しめる巨悪の根源を完膚なきまでに叩きのめすべき時が来たのだわ。この日のために私はあったのよ! 今こそ! 全てをかけて!!」
「……のま、まで……」
「うるせーな。ちょっとは静かにしろよお前ら」
「たわけが! そんな事じゃから舐められるんじゃ! いつもの威勢はどうした! 今怒り狂わんでどうする! 肝心な時にガス欠か? クズめが! 貴様から先に灰にしてやろうか!?」
「ゲンナリする。その頭は見たくない。さっさと隠せハッピー野郎が! おや老師、あなたも同類ですか? いけませんねぇ……いまキレイにしてあげますからねえ、ちょっとじっとしててくださいよ手元が狂うとあぶないですからねー水圧でも人のからだはかーんたんにあながあいちゃうんですよしっていましたかーあ?」
「! ……が、あのお方が、ついに狂ってしまわれたわ……! 雷ショックで意識を取り戻さないといけないかしら……今ちょっと動揺していて手加減ができそうにありませんから、心の臓が動かなくなっちゃったらごめんあそばせ……」
「……はナスすベガ……」
「冗談じゃねぇぜ。なんでこいつらこうなっちまったんだ? そろそろ部隊の招集をかけた方がいいのか……?」
「魔王を発見! 繰り返す! 魔王を発見! 奴は城にいる! 魔王は既にこの城に君臨している! まだ手遅れではない! 幸運なことに、奴は未だ眠りについている! 神を信じる者どもよ! 全員で力を合わせ、死力の限りを尽くし、最期の戦いに挑め! 魔王が目覚める前に全てを終わらせるのだ! 目覚めてしまったその時わわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわ」
「理解不能だわ……さすがのオレもこんなノリにはついてけねーよ……魔王が来たらこんな修羅場が待ってるってのか? いや、魔王が来てるからこうなってるのか……侵入を許した……? バカな! そんなことは絶対にあり得ない! これまでどれだけ我らが全身全霊で身を粉にして、先祖代々受け継いてきたこの地を地道に強化し続けてきたと思っているのだ! 人の力をなめるな! 魔王がなんだ! 神がなんだ! むしろ我らが神なのだ! 愚かなる魔王よ! 貴様は今! 自らの! 命を! 我! に! ――致命的なエラーが発生しました――自爆シークエンスを作動します――」
「うふふ、あなた騒ぎすぎですよ――まわりのみなさまがオロオロしてしまってますわ――ちょっと魔王様、私どもビビりまくってしまって、たいしたオモテナシもできませんで、お恥ずかしい限りでございます――よろしければお城のひとつふたつ、おつぶしになりながらおまちくださるとたすかりますわ――あっしつれいをば、おてをわずらわせるなんてわたくしとしたことが――ええすぐおわりますから――」
「ちっからーのーかーぎーりー。わーれらーはーつーくーすー。おー。まーおー。わーれらーがーまーおー。ちっからーのーかーぎーりー。わーれらーはーつーくーすー。おー。まーおー。わーれらーがーまーおー。ちっか――」
「勇者だの魔王だのそんなもんどうでもいいわ――ワシはただ全てを――」
「脳みそをブチまければさすがにどうすることもできまい――」
「ほう、それはいい考えだ、ちょっとおまえでためして――」
「上手くいったあかつきには、世界のはんぶんを――」
「即死させてはおもしろくないのでじわじわと――」
「くるしいかなしいつらいいたいたすけて――」
「がるぐれいぶてんそうじゅんびかいし――」
「みんなでなかよくほろびましょ――」
「だれがなにをいっているのかわからない――」
「れ――」
「
「ああ、おはようございます。順調に魔法を修得しているようで、なによりです」
「ほぇー、ほめられちゃった」
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