三投目 マニアック観戦はマニアック過ぎる

【マニアック観戦】


「またお前、マニアックモード見てるのか?」


「お前も見てみろよ! めっちゃ面白いから!」


「そんなのに投資してる暇があったら、ヘルモードとかハードモードとか、実りのある奴に投資しろよ」


「どうせ、マニアックモードクリア者は現れねぇって、お前もそう思ってるのか?」


「そうだなぁ、だって一度の召喚がたったの五人でモンスターからはアイテムもコインも出なくて、俺らとの連絡手段も無くて、モンスターもクエストもヘル以上の強さだろ? 誰がクリア出来んだよ!」


「と、思うだろう? このディアって奴は少し見どころあるんだよ」


「その割にお前が投げ銭してるのピンク髪の女ばっかりじゃねぇか! どうせエロ目的だったら他のモードの方が楽しめるのによぉ」


「チッチッチッ! だから、マニアックモードなんだろ? この女がモンスターや仲間に犯されるところ想像したら……最高だろ!?」


「確かにな……うん、確かに……」


「少しでも生き延びて楽しませて貰わないと! だからお前も課金しろ!」


「仕方ねぇなぁ——。んっ? こっちのこいつは0フォロワーなのか? 何日目だ?」


「まだ二日目だが、無理だろ。こいつは即死だろ」


「確かにな。そんな奴に課金しても無駄だな」


「だろ?」


「逆に賭けねぇか? 何階層までクリア出来るか」


「俺が1だったら良いぜ!」


「だったら俺はゼロだ!」


「クソ! 狡いぞ! ゼロはなしだ!」


「いいや、成立だ。俺は10万コイン賭ける」


「面白そうな事やってるね。私は5階層制覇に5万」


「お! だったら俺は1階層制覇に10万!」


「俺も!」「私も!」「ウチも!」「俺っちも!」


「待て待て待て待て! 分かった! 賭場を開くから! でも、おまえら賭けた奴のフォローと投げ銭は禁止だからな!」


「オッケー」「了解!」「良いよー」


「それ、お前がゼロ階層だからだろ!?」


「良いじゃねぇか! フェアに行こうぜ!」


————

——


どうしてこうなった?

俺はいつも通り通学してて。

そうか——トラックのタイヤが飛んできて、避けたところに丁度ぶつかって。

死んだのか?

死んだからこんな所に?


あぁ、だからディアはあんな事言ってたのか。

転生的な何か。

有名だからな、そんな設定。

だから、あいつはその事に気付いて喜んでたのか。

ルナは……きっと自殺だろうな。

そう考えるとこの状況も理解出来る。

タブレット端末を見る限りは投げ銭でコインを稼いでチュートリアルをクリアするって所か——ボタンを押すのは風呂とトイレの時くらいで良いだろうな。

問題はどうやってフォロワーとコインを稼ぐかだけど——。

俺には無理だな。コミュ障がどうやってライバーになるんだよ。

無理無理。

だったら食事と水の問題だな。

一週間かぁ……耐えれるかな?

外に出れば何かあるはずだ。


きっと——


水は風呂の水を飲めば何とか一週間——

無理かなぁ……水だけで一週間。


——と、リストがそんな事を考えながら何も口を開かずに四日間が過ぎた。

空腹も限界で、初めて発した言葉が「誰か見てるなら助けて——」


視聴している者の多くが嘲笑った。

マニアックモード史上もっとも脆弱な人間に。


チャリーン


【所持コイン:10C】


誰かの気紛れだった。


チャリーン


【所持コイン:30C】


同情だった。


「ありがとうございます!」


チャリーン


【所持コイン:120C】


哀れみだった。


しかしそれらの投げ銭がリストの命を辛うじて明日へと繋げた。


しかしその事が、リストを地獄へと突き落とす事になる。

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