脱糞魔法は最強です!!!!脱糞魔法を手に入れた俺は、敵国に疫病を流行らせ無双します~
Green Power
夜にベットで一人泣いた日
俺の名前は鯉川ギャラドス。27歳。
見てのとおりキラキラネームだ。まぁそこらへんは置いておこう。
キラキラネームを持つ俺の過去を聞いたところで詰まらないしな。
親は個性のある子どもになって欲しいとこの名前をつけたらしいが、
俺の個性はこの名前だけ。性格も能力も、これまでの人生も全ては平凡。
簡単に言ったらつならない人間さ。
そんな俺だが、一つだけつまるというか、息も詰まる話がある。
その、なんだ…突然なんだが、俺は異世界に転生した。
住まいの実家に帰って、自室で軽い晩酌をしている時だった。俺は結構酒には強くて、ビール缶でも最低で五本以上は飲まないと酔いは来ないぐらいなのだが、その日は仕事の疲れもあったのだろうか、初めの一本目からすぐに酔いが来て、気づいたら意識が飛んでいた。
そして目を覚ましたら目の前にはおっぱいが…。
いや視界がぼやけてて意識も少し朦朧としていたからその時は分からなかったが、手に触れていた感触と、口の中に溢れた生暖かい甘い牛乳みたいな味でなんとく自分がおっぱいを吸っていて、そしてそのおっぱいを握る手が余りにも小さくて、なにより自分が女性に抱きかかえられているという状況に俺は思わず口を開けて女性を顔を見つめていた。目が上手く見えない俺が察せられるぐらいに、彼女の、いや俺の母親は俺の表情に驚いている様子であった。
もうこの時点で自分が赤ちゃんになっていることは理解していたし、いろいろその後の自分が受けるであろう困難の数々を察してしまっていたが、これが夢ではないと受け入れるのにはかなりの時間が必要だった。
別に前世に満足していたわけではない。だからといっていきなり別の世界、別の人間に生まれ変わって「よしこれからこの世界で頑張るぞ!」なんて割り切れるほど、前世の生活が満足できていなかったわけじゃないんだ。彼女は27歳になってもこれまで一度も出来たことはなかったけど、それでもあの現代日本の生活や友達、両親のことを綺麗さっぱり忘れて一からスタートなんて俺にはできなかった。でも今思えばそれがいけなかったんだろうな。
話を戻して、この世界に転生して7年ほどたった。小さな寒村であるため正確ではないだろうが、生活様式や周りの大人の会話から察するに、俺が転生した世界の文明はだいたい15世紀ころだろう。世界史は好きだったからここら辺は俺でもちょっと分かる。この時代は中世の終わりごろで騎士の時代から銃の時代へ、そしてそれは絶対王政と植民地主義が徐々に確立していく時代であり、同時に市民と農奴たちの権力闘争も激化した時代であった。そして周りの話しでは近頃は冬の訪れが早く、作物の実りも減少している様であった。なのに税だけは寧ろ増えている有様で、実際に俺がしっかりと村の状況を把握できるようになった5歳から今までの二年間だけでも、10人が餓死、または凍死している。人口200人も満たない小さな村で10人も死ぬなんて大変な話だ。村の人間たちは怒りと不安の日々の中で、この不満をぶつけられる生贄を求め続けていた。そんな寒冷化と階級闘争がうごめく世界に、俺は農奴の子供として生まれてしまったのだ。
基本的にというかほぼ絶対的に農奴の子供は農奴である。
少し前までは農奴でも必要な能力と資金があれば騎士になることはできたが、それは三代前の皇帝陛下によって禁止令が出されたらしい。理由は分からない。教育を受けていない寒村の大人たちにそんなことを7歳がいきなり聞く訳にもいかない。
理由が分かった所で、その原因を解決する手段がなければなんの意味もない。俺はこのまま一生を農奴で終えるのかもしれない。でもどんなときにも例外はあるんだ。
それはこの村から逃げ出して都市に移住すること。今簡単に言ったがこれがなかなか難しい。農奴は生まれた村から離れることは禁止されている。だから農奴が商売や観光目的なんかで都市にいくことなんで100%無理。しかも農村には領主から派遣された代官と兵士の監視もある。それでもなんとか夜中にこっそり逃げ出して、他領主が治める都市や自治都市に逃れることが出来れば、辛い生活から解放されるかもしれない。基本的に逃げ出した農奴の領主が他領主や自治都市に農奴の返還を求めても、請求から1週間以内にその人間が自分の領地の農奴であることを証明できなければ、領主はその農奴に対する請求権を放棄しなくて行けない法律があるからだ。だから毎年何人もの人間が村から西のハンブルクという都市を目指して逃亡を図るが、大体は兵士に捕まって、むち打ちや強制労働の罰を受ける羽目になっている。
そしてもう一つの例外。それは7歳になったあとに教会で神父から祝福の儀をうけると神からもらえるという祝福だ。この祝福は全員がもらえる訳ではない。むしろその総数は少なく、めったに神から祝福与えられる者はいない。なによりその祝福の内容もバラバラで、必ずしも役に立つとは限らない。例えば体重が少し軽くなる祝福とか、遠くを見える祝福や、歩幅が少しだけ大きくなる祝福なんかもある。
でも戦いに有利になる祝福や生活を便利にしてくれる祝福――汚染されていないきれいな水を生み出す祝福など――内容によっては農奴から解放奴隷になったり、そのまま領主の直臣として貴族の末席に加えられることもある。つまるところ、今この村にいる大人たちはそういった祝福を与えられなかった、もしくは与えられても真面な祝福でなかった運のない男たちである。
そして俺は三日前に7歳の誕生日を迎えた。同年代の子たちは既に7人が教会で祝福の儀を受けたが、一人も祝福を授かる子はいなかった。
だから親の期待の眼差しはすごかった。そしてなにより俺自身がものすごく期待していた。
だからその分落胆は酷かった。
俺は祝福を与えられた。
動揺する司祭からこぼれた俺の祝福の名前。
その名は――脱糞魔法。
対象者を強制的に脱糞させる魔法であった。
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