ハーフ&ハーフ
とらまる
ハーフ&ハーフ
隣のM市に新しいラーメン屋が出来た、という話を
友人の市川君に聞いた私は
早速休日に電車に乗り、M市に赴いた
駅から歩いて5分ほどの
繁華街からちょっと外れた所にその店はあった
店名「来来軒」
あまりにオーソドックスなので思わず笑ってしまう
店先から店内を覗いてみると
数人の客しか入っていない
あれ?開店したばかりだよな
あまり美味しくないのかな?
一抹の不安を抱いたが
ラーメン好きの市川君によると
モチモチした太麺が美味しいみたいだぞ、と言っていたことを思い出し
勇気を出して入店してみた
入り口に入ると券売機
何と、醤油と味噌の2種類だけ
2種類で勝負してるのか~と感心
さて、どちらにしようか?と券売機の前で思案に暮れていると
厨房にいる威勢の良さそうなお兄ちゃんが
「お客さん、迷ったらハーフ&ハーフってのが出来ますよ!」
と大きな声で教えてくれた
ハーフ&ハーフ??
「えっ、それって・・・?」
「そう。醤油と味噌のハーフ&ハーフです。うちしか出していないものですよ!」
と言うではないか
あっ、そうか
醤油と味噌が半ラーメンとしてひとつずつ出て来るんだな
それはお得感ありそうだ
ということで券売機の一番右に表示してあるハーフ&ハーフを押して
食券を威勢のいいお兄ちゃんに渡す
店内はカウンター席8席。4人掛けのテーブル席が2席
結構小さめ
お客さんは大学生風の男子が3人カウンター席
おそらくサラリーマンと思われる男性連れ2人がテーブル席に
厨房内は例の威勢のいいお兄ちゃん一人で賄っているようだ
いわゆるワンオペってやつか
おそらく店長なのだろうな
若くして起業か
やるな、兄ちゃん!
開店したばかりのようだから店内はとても綺麗
何だか分からないアジアン風の観葉植物も飾られている
壁上のモニター画面はテレビ番組ではなく
世界遺産のイメージビデオを流している
お洒落だな、兄ちゃん!
約5分ほどしてラーメン到着
何と!!
驚くべき光景!
ひとつのどんぶりに醤油スープと味噌スープが半分半分
きっちり分けられているではないか!
どうやったらこんなこと出来るんだ??
しばし驚いてどんぶりを凝視していたら
「これやるの、テクがいるんですよ」
と、お兄ちゃんが満面の笑みで誇らしげに語っている
そりゃそうだ
こんなの見たこと無い
具材は醤油側にチャーシュー1枚、メンマ、ネギ
味噌側にもやしとコーン
まさにピザ並のハーフ&ハーフだ!!
「写真、撮っていいですか?」
「どうぞどうぞ。ぜひインスタに載せてください!」
お兄ちゃん、嬉しそうだ
早速スマホで写真を撮り、では実食!
箸をどんぶり内に入れると
醤油スープと味噌スープが一気に混ざり合う
一口麺をすする
ううっ!何だこの味は・・・
思わずどんぶりから顔をあげると
店内にいたお客さん全員が
お前もそう思うだろ、と哀れむような視線で
私を見つめていた
ハーフ&ハーフ とらまる @major77
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます