③教会のお手伝い――⑰
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アサギとアカネが少し疲れて休憩している時でした。コハクが教会に戻ってきたのは。
「お帰りなさーい!」
主を待っていた忠犬のような速さで、アカネがコハクの元へ駆け寄ります。
「ただいま」
コハクは何やら大きな紙袋を二つ抱えていたので、アサギは手を貸そうとしましたが、「大丈夫」とやんわり断られます。
「アサギ君もシスターも、庭の掃除はこれくらいで充分ですよ。ありがとうございます」
「え? でもまだ全然……」
「思ったよりも随分と綺麗にしてくれたから。後は俺一人で大丈夫」
三人が集めたゴミと雑草を手際よくゴミ袋に分けたコハクは、「お礼をさせてください。お茶にしましょう」と三人を中へ促しました。
通されたのは、礼拝堂の奥の小さな部屋。庭を眺められる窓の手前にテーブルとイスが備えられていて、ティータイムを楽しむにはちょうどよさそうです。
アサギとシスターはイスに腰を降ろしましたが、アカネはコハクから離れようとせず、一緒に部屋を出ていきました。まるで親を慕う子犬のように。
アカネが閉めていかなかった扉を横目に、シスターは「ふふ」とおかしそうに微笑みました。
「アカネちゃんったら、神父様のことが大好きなのね」
「そうみたいですね。神父様の方も、アカネちゃんには気を楽にして話してるみたいですね」
「そうね。あの子は私以上にしょっちゅうここに来てるみたいだから。アサギ君には、そういう子はいたりしないの?」
「え!? い、いません、そんなのっ……」
「あ。アサギ君、見て。本当に綺麗なお庭ね」
「わっ、本当だ……!」
部屋の窓からは、さっきまでアサギ達が作業をしていた庭が見えました。
青葉を実らせた木々が並ぶ、緑の一角。そこへ穏やかな風が通り抜けます。枝葉を揺らすその波は、奥に聳え立つ鐘楼にも届き、教会の内部まで神聖な鐘の音を響かせました。
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