③教会のお手伝い――⑮
理解できない。とでも言うように男の子は瞬きを繰り返していましたが、全く揺らがないアイの様子に「そこまで言うならわかった」と袋を受け取りました。
「じゃあ、うさぎ君にはこれ。あげる」
ハクアの前にしゃがんだ男の子は、眩しい光を放つ黄金の林檎を差し出しました。
「……これ、ぼくがもらっていーの?」
「ああ。うさぎ君も、丸太を運ぶの手伝ってくれたんだろ? だったらこれは当然の報酬だ」
「ありがとっ」
パッと瞳を輝かせたハクアは、きらきらと光る林檎を両手に抱えます。宝物のようにぎゅっと大事に抱きかかえて、興奮気味にヒスイの足元へ駆け寄りました。
「ひすいっ」
「……何」
「これっ、このりんご、おしろにもってかえって。のあに、あげるっ」
「あー、そういうことね……わかった」
ハクアの幼気なお願い事に、ヒスイは素直に頷いて林檎を受け取りました。お城でお留守番中の黒猫のために。
あっさり黄金の林檎を手放した男の子に、アイは「いいのか?」と問いかけます。
「あの林檎って珍しいモンなんだろ? なかなか手に入らないんじゃねぇの?」
「いいんだ。俺はあの林檎には興味なかったから」
「だったら何で……もしかして、あの林檎売りにゲーム挑んだの、最初からハクアのためだったのか?」
「俺もそこまでお人よしじゃないよ。あれが希少なものだってことに代わりはないだろうけど。どうしても気が引けるっていうなら、君があの時声をかけてくれたことへの礼だと思ってくれればいい」
「あの時? オレ何か言ったか?」
「この街に来て、俺は沢山の大人達と遊んできた。遊び相手もギャラリーも俺の足をすくうことにばかり夢中で、誰も止めてくれなかったよ。「危ないからやめておけ」なんて」
黄昏時の太陽と同じ色を纏う瞳が、満足そうに微笑みを作ります。悪魔と呼ぶにはあまりに美しいその光は、周りの景色に溶け込めずに浮いているようでした。
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