③教会のお手伝い――⑪


「おう、兄ちゃんもこの林檎が欲しいのかい? 俺に勝てたら譲ってやるぜ!」


「じゃあ俺とも遊んでもらおうか。賭け金はさっきの十倍でいい。その代わり、俺が勝ったらその黄金の林檎と、売り物の林檎も好きなだけ貰っていっていいか?」


「へへ、随分と威勢のいい兄ちゃんだな! いいぜ! 俺に勝てたらの話だけどな!」


「お、おいっ! やめとけ!」


 二人の話がまとまったところで、アイは金髪の男の子の腕を引きます。そして林檎売りに聞こえないよう、耳元で忠告を注ぎました。


「この街の大人は意地汚ねぇヤツしかいねぇんだぞ! アイツだって、何かイカサマ仕掛けてくるに決まってる! 最悪有り金全部むしり取られるぞっ」


「そうだな。何か仕掛けてくるだろうな。でも大丈夫。心配してくれてありがとう」


 黄玉色ので優美に微笑む男の子は、自分の腕からアイの手を離すと、ゲームに興じるため台を挟んで林檎売りと向かい合いました。その長い手にトランプを集め、慣れた手つきでリフルシャッフルを繰り返します。


 本当に大丈夫だろうか。

 アイは放っておけず、ハラハラしながらトランプの動きを目で追います。「りんご、あのひとがもってっちゃうの?」とハクアもじっと見つめています。


「あ、あああっ……!」


 林檎売りと男の子の勝負が始まると同時に、カラン、と近くで何かが落ちる音がしました。

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