花は折りたし梢は高し

彩亜也

序幕

 愛する十吉じゅうきち様へ

 貴方様の心に菖蒲あやめ姉様がいる事は理解しております。

 ですから、この度のお話、貴方様からお断りしていただけませんか。

 姉の最後の頼みだとしても、私を助けると思ってどうか突き放してください。

 どうか、よろしくお願いいたします。

 千築ちづき鈴蘭すずらん


 私が言わなくてもきっと十吉さんの事だからそうしてくれるだろうけど念には念を、よね。

 ——テーブルに乗った便箋に綺麗に折った手紙を入れて封をする。この手紙を十吉さんが受け取れば私と彼との繋がりも綺麗に消え去るでしょう。でも、それでいいの。だってこれは私の縁では無いから。

 そうよね?姉様。

 両親の息のかかった女中達の目から逃れて向かった先は宇佐美うさみ邸の前。鈴蘭が来たと伝えると女中のなかでも古株のイネさんが出てきた。私は彼女に手紙を託すと家に戻る。その心は晴れやかだった。

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