第75話 Bランクダンジョン攻略完了!
「ぷはぁ!」
岩陰で着ていた服を脱ぐと、木桶に詰めてあった飲料水を頭から被り、刺激臭を放つアースドラゴンの血で汚れた身体を清める。
「つめてぇ!」
「ヴェルデ様、今トマスさんが焚火を起こしてくれてますので、身体を洗い終わったら、そちらで暖をとってくださいね!」
反対側の岩陰では、俺に抱き着いて血まみれになってしまったガチャをアスターシアが洗ってくれている。
「助かるよ。ううぅ、つめてぇ」
石鹸を使い、血で汚れた身体を洗いつつ、装備に付いた血も洗い流していく。
今度戦う時は絶対に腹の底には潜り込まないでおこう。
圧し潰してきた時、アイスの魔法で凍らせられたらよかったんだろうけど、クールタイムが終わってなかったからなぁ……。
連撃使って最大火力で倒しきれないと、連撃のクールタイムが終わるまで、回避か防御か通常攻撃しか選べないのが辛いところだ。
早いところ連撃のスキルLVあがって、クールタイムが減ってくれないかなぁ。
使用後のクールタイムが減れば、通常攻撃や回避防御でしのぐ時間も削れるし、回復魔法や防御魔法もすぐに使えるようになる。
そうしたら、LVの高い魔物とでも、安定した戦いがもっとできるはず。
そのためにはもっといろんなスキルを獲得したり、成長させていかないとな。
Bランクのダンジョンを攻略したことで、褒賞の金色コインもいっぱい出ただろうし、ホーカムの街に戻ったらガチャ引くとするか。
身体と装備を洗い終えた俺は、綺麗な布で身体を拭くと、代わりの服を空間収納から取り出し着込んだ。
「ふぅ、冷たかったけど、さっぱりした」
濡れたままの装備を持ち、隣のアスターシアに声をかける。
「ガチャの様子はどうだ? さむがってないか?」
「大丈夫ですよ。もうすぐ、終わりますのでヴェルデ様は先に暖をとっててください。あとでガチャ様もお連れします」
「そうか、じゃあ、先に暖をとらせてもらうよ。ガチャ―、しっかりと洗ってもらえよー!」
岩陰に隠れてて見えないガチャだが、抵抗はしてない様子なので、アスターシアに任せ、俺はトマスが火の番をする焚火に向かった。
「マシになったようだな」
「ああ、酷い目にあった」
火の番をしていたトマスに応えながら、まだ濡れている装備を焚火の前に並べていく。
「とりあえず、あの宝箱のチェックはしといたぞ。罠はない」
「中身は?」
「まだ見てないさ。お前のものだしな。手助けもできてないオレが、勝手に見るのははばかられる」
「意外と義理堅いやつだな」
「そこまで金に困ってねえってだけだ。ただし、今回の調査依頼を折半……いや2割くれればの話だがなー」
ああ、そう言えばトマスは調査依頼を受けて、このダンジョンに潜ってたんだった。
それが突発的なトラブルで、あれよあれよと言う間にBランクダンジョンまで成長してしまった。
もともとトマスが受けた依頼だし、いろいろと助けてもらったから、3割くらいはとっても問題ない気がする。
「分かった。調査討伐報酬の2割を譲るってところで手を打とう」
「本当にいいのか!? 冗談で言ったんだが!? ほら、キュアポーション代とかもあるしよ」
「いらないならやめとくが――」
「いる! もらうぞ! 2割だからな!」
「おう、2割譲る」
トマスは思わぬ収入を手にできると知って顔を綻ばせた。
Bランクダンジョンの調査報酬と討伐報酬合わせるとどれくらいになるか分からんが……。
総額数千ゴルタくらいにはなるはずだよな。
ほどほどに実入りはあるはず、それに宝箱の中身次第ではもっと稼げるはずだ。
「とりあえず、宝箱の中身を確認してくる。火の番を引き続き頼む」
「おぅ、いい物が出るといいな!」
「まったくだ」
俺は岩場にポツンと置かれている金属製の宝箱の前に行き、軽く手を触れ、鑑定する。
―――――――――――――――――――――――――――――――
銀の宝箱
耐久値:300/300
罠:なし
状態:無施錠
――――――――――――――――――――――――――――――――
トマスの言った通り罠はなしか。
施錠されていない宝箱の蓋を開け、中身を確認する。
小型の弓と短杖が入っていた。
それぞれ鑑定をする。
―――――――――――――――――――――――――――――――
風纏いの短弓
攻撃力:30+風属性威力20
属性:風
特別効果:この弓を使い放った矢に、風属性の攻撃が付与される。
エンチャント:不可
解説:風属性を付与された緑色の小型の弓。
――――――――――――――――――――――――――――――――
エンチャント装備品だ!
矢に風属性が付与される弓かー。
飛んでるやつはだいたい風属性に弱点持ってるし、狙い撃ちして矢で射抜けたら、弱点ダメージが追加されるやつっぽいな。
基本的な攻撃力は低いけど、飛行系キラーの弓って感じだ。
ジョブスキルもないし、射撃系スキルはまだ習得してないし、今の俺だと宝の持ち腐れ感が強い武器になりそう。
次は短杖だが――
―――――――――――――――――――――――――――――――
魔術師の短杖
基礎攻撃力:20
属性:なし
特別効果:攻撃魔法の魔法威力+15 MP容量+50 打撃攻撃可能
エンチャント:不可
解説:魔法の発動を補助する長さ50cmの金属製の杖。片手装備可能。装備者のMPが最大値の場合、杖にMPを50まで貯めることが可能。魔法使用時は杖に貯まった分を優先使用する。
――――――――――――――――――――――――――――――――
こっちもエンチャント装備だったか。
外部タンクとしてMPを貯めておける杖って感じか。
俺自身のMPが最大値にまで回復すると、装備してれば杖にMP貯まっていくやつみたいだ。
シャーマンの杖よりか若干魔法の威力も上がるし、MPは心もとなかったので、これは使った方がいい気がする。
とりあえず、どっちもエンチャント武器だし、大収穫って感じだ。
宝箱の中身を漁り終え、焚火に戻ると、ガチャたちもやってきた。
「とりあえず、中身はエンチャント武器2つだった。どっちもいいものだと思う」
「ひゅー! さすがBランクの討伐褒賞! 低ランクじゃ滅多に出ないエンチャント武器が2つも出るなんてな! すげーぜ」
「おめでとうございます! これもヴェルデ様のお力のおかげですね!」
みんなが喜んでいる中、ガチャも俺の膝もとにダイブしてきて喜びをあらわにしてくれた。
この周辺の村の人たちも魔物の襲撃に晒されずに助かっただろうし、俺たちも稼げたし、探索者冥利に尽きる仕事をした気がする。
一時はどうなるかと思ったが、何とかなって本当によかった……。
あとはダンジョンの消滅の確認をして、ホーカム街にことの顛末を伝えないとな。
「さて、ちょっと気が早いかもしれないが、脱出ポータルが開くまでBランクダンジョン討伐祝いでもしようか」
「そうですね! すぐにお食事の支度をします!」
「そういえば、帰還する時間をかなり超えてたな。もう夕方頃か」
ガチャもお腹が空いていることを思い出したようで、食事の支度を始めたアスターシアの近くに駆け寄り、つまみ食いの準備を始めた。
それから俺たちはゆっくりと休息と食事をとり、脱出ポータルで外に出ると、ダンジョンの入口が消滅したのを確認し、日が暮れた道をホーカム街へ歩いて戻ることにした。
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