第53話 調査達成したからボスも狩る
昼食を終え、探索を再開した俺たちは数体の絡み根草を倒したところで、ボス部屋らしい広い空間が見える場所に来た。
奥に人のような形をした木が立っているのが見える。
「あれがここのボスか……」
「みたいですね。強そうですが、大丈夫でしょうか?」
黒い板が調査の終了を告げる青い光を発している。
魔物調査、ダンジョンマップ、魔素濃度の三つが揃ったようで、調査依頼を終えたらしい。
黒い板の上に脅威度判定はDと浮かんでいるな。
「どうやら、けっこう成長したダンジョンだったらしい。隠蔽されたミミックも脅威度判定を上げた原因かも」
「Dランクのダンジョンですか……。ヴェルデ様なら、倒せそうですが」
ボス部屋に入ると、倒すまで脱出は不可能になるし、みんなで入らないと脱出用に転移ゲートも使えない。
ここでダンジョンから引き返して調査依頼達成だけでもいいが。
ここまで来たら倒したいよな。
「アスターシアとガチャは影潜りの外套で隠れててくれ。あれは、俺が倒す」
「承知しました。ガチャ様、こちらへ」
アスターシアがガチャを抱き抱えると、外套を被り姿を消す。
プロテクションシールドもあるし、よっぽどのことがない限り、アスターシアたちまでは攻撃がいかないはずだ。
「よし、行くぞ」
部屋に入ると入口が消え、奥の人の形をした木がメキメキと音を立てて動き出す。
「愚かな侵入者め。我が領域を犯した者には死を与える」
木の幹に浮かんだ老人の顔から、敵対的な言葉が吐き出される。
「それはどうかな? 倒されるのはそっちだと思うぞ」
俺は空間収納からチャンピオンソードを取り出すと、両手にしっかりと持って構えた。
Dランクのダンジョンのボスだし、最大火力を出せる武器で一気に仕留める。
地面が抉れたかと思うと、尖った根っこがこちらを狙って飛び出した。
「遠い間合いでもやれるのか!」
こちらを狙って飛び出した根っこを斬り払う。
白い樹液が辺りに飛び散ったが、すぐに根っこの先は再生していく。
「たかが養分のニンゲン風情が我を傷付けるとは! 許さぬ!」
今度は手指らしき枝が伸びて、こちらの心臓を狙ってきた。
紙一重で枝先を避けると、手で触れ、鑑定を行う。
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エント LV14
HP250/250
MP40/40
攻撃方法:取り込み 再生 消火 枝刺し 根刺し
弱点属性:炎
解体時取得物:エントの古木 エントの若芽
解説:ウィンダミアの樹海の中に出てくる木の魔物。MPを使用して再生をするため、再生能力が高く、耐久度の高い魔物として知られている。炎に弱いが自らの身体に貯め込んだ水で消火するため、水がなくなるまでは弱点化しない。枝や根は攻撃してもダメージ判定なしのため、顔のある本体を攻撃しないといけない。
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枝や根を傷付けてもダメージにならず、本体を一撃で葬らないと回復するのうざいな。
それに消火のせいで、ファイアの連撃押しでやりきれないかもしれない。
やっぱ物理ごり押しで叩き切るしかないよな……。
倒す方法を考えてる間も、枝や根がこちらを狙ってドンドンと飛んでくる。
斬り払っても枝や根は無限再生しそうだぞ。
このままじゃ、間合いにも飛び込めずじり貧だな。
プロテクションシールドがぶっ壊れてもいいから、突っ込んで一気に仕留めるしかない。
俺は飛んでくる枝先と根を斬り払うのをやめ、剣を構えて本体に向かい突撃をする。
こっちに向かってくる枝や根でシールド耐久値がガンガン削れてるけど、もってくれ!
あと一歩のところまで近づくと、敵の攻撃を弾いてるプロテクションシールドが弾ける音を発して効果が消えた。
あと一歩! 行くしかねぇ!
あと一歩踏み込むため、身体を動かすと、鋭い枝先が頬を掠めて痛みが走る。
「こんなもんじゃ、俺は止められねよ! それで、ここからは俺のターンだ!」
「ニンゲン風情が吠えるな! 串刺しにしてやる!」
チャンピオンソードが届く間合いの入った俺は、連続攻撃のスキルを発動させた。
目にもとまらぬ速さで、エントの本体を2回斬りつける。
本体を傷付けたら、赤い血のような樹液が噴き出した。
「その程度で倒せ――」
「悪いな。もう1ターンある」
連撃スキルでクールタイムをキャンセルし、再び連続攻撃を本体に打ち込んだ。
攻撃力の高いチャンピオンソードによる4連続攻撃で沈められないはずがない。
3回目、4回目の攻撃がさらに大量の樹液を噴き上げた。
「馬鹿な……ニンゲン風情が……」
大量の樹液を噴き上げたエントは、ボロボロに枯死した木になって絶命した。
光の玉が発生し、ガチャとアスターシアがいると思われる場所に飛んでいく。
「ふぅ、意外と強かったかもしれない」
エントを倒し、樹液で濡れた地面に足跡だけが付いて、動くのが見えた。
影潜りの外套の弱点を見つけてしまったなぁ。
気配も姿も消せるけど、足跡だけは消せないらしい。
「ヴェルデ様、頬に傷が! すぐに消毒いたしましょう!」
足跡が俺の前にくると外套の力を解いたアスターシアの顔が現れた。
既にポーチから消毒液とハンカチを取り出し終えている。
「かすり傷だし、それに魔法で――」
「ちゃんと消毒してから回復魔法をしないと。変な病気になってもいけませんし」
「分かった。じゃあ、頼む。どのみち、転移ゲート出るまで休憩だしな」
「では、濡れてない場所に移動しましょう。ガチャ様の足も汚れてしまいますので」
「ああ、そうだな」
エントの樹液で濡れていない場所に向かって移動することにした。
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