第16話  京都と朝比奈

僕は京都に向かう。空間移動で飛ぼうと思ったがやめた。普通に学校には欠席届を出した。叔父が無くなり葬儀に参列するとあえて噓をついた。学校はあっさり”大変でしたね。気を付けて行って来てください。”と3日休むことを承諾してくれた。僕は高3。大学受験でピリピリしている学年だ。早い生徒はすでに大学が決まっている。12月。僕はまだだった。1月の大学受験。テストは目前だ。空気は冷たく、僕にはとても心地よい。冬の冷気。両親、兄には勉強合宿だと嘘をつき、家を出た。彼らは完全な地球人だ。僕は残り少ない時間をできるだけ地球人らしく過ごしたかった。自宅をでて東西線早稲田から東京駅へ。東西線の車内はとても込み合っていた。大学生がたくさん降りたにのにも関わらず込み合っている。そういえば降りた大学生の中に数人のアトリナ人がいた。しかし完全に電磁波はなく。地球人化している。大手町駅に着くと地下から改札を出て2Fへ上がる。東京駅新幹線ホームだ。さっきまでの東西線の朝のラッシュがうそのようだ。新幹線ホームは快適だ。そこまで混雑していない。それに席の確保はできている。“ピー”次々に新幹線は発車して行く。僕はカバン片手にサラリーマンのおじさんたちが買っているおにぎり弁当を真似して買ってみた。そして左足から一歩、新幹線へ乗り込んだ。僕は京都に向かう。僕は正直、家族旅行をしたことがあまりなかった。行ってもせいぜい東京近郊。箱根か遠くて日光東照宮ぐらいだ。日帰りだ。僕はこの地球に侵入到着後、バクのせいで記憶とデーターにダメージがあるようで一部、地球人として時間を過ごしていた。無意識のうちに兄の時間を毎日少しづつ吸い上げ僕のエネルギーとして来たようだ。それに多少データーがバグていても人間で言う第六感が働いた。家族旅行にしても東京から出なかったのはアトリナの電磁波を感じたかったからだろう。地球人はそれを結界と呼ぶ。東京は僕に都合の良い電磁波が張り巡らされている。すなわち守られている。しかし、言い換えると監視されていたのかもしれない。安心という名の監視だ。僕の頭の上部がかなり高い確率で正解ですと表示する。”ガチャ”新幹線が止まる。”品川”に止まる。僕は窓際の席からホームを見た。意外と人が乗り込んでくる。僕はその乗り込んでくる人たちに中にも数人のアトリナ人を見つけた。彼らもまた全くの地球人になっていた。”キーン”突然小さな金属音が鳴った。僕の頭の中に響く。あまり気持ちのいい音ではない。”ガタン”新幹線がその音をかき消すように発車する。僕は窓の外を見た。窓越しに一瞬データーが映し出されヌコ、ヌコが僕にウインクした。しかも変顔で。クールな僕が吹き出しそうになったが、ぐっと笑いをこらえた。僕の横のおじさんが動いた僕をチラリと見てまた、何事も無かったようにまっすぐ正面を向いてPCをたたいて仕事を始めた。なんだか気まずいな。地球人のような感覚だ。僕は気を取り直しデーターだけを読み取った。ヌコの顔は見なかったことにした。正直、頭の中のデーターはこの移動時間で整理し機能を休めておきたかった。これからヒートアップする戦いのために。しかし、黄色い敵が動きだした。今はこのまま、敵を泳がすことにした。今は静かに。静かに。”ゴー”っとトンネルに入る。抜け出すと左手に青い海が見えた。とてもきれいだ。と同時に電磁波が消える。安全地帯を出てしまった。黄色の光が先頭車両前方に一体見える。来たか。まあーいいか。僕は探索能力を切った。僕はこれからしなくてはいけないことがある。煩わしい雑魚は今は、ほおっておく。喉が渇いた。ペットボトルを手に僕は買ったおにぎりを食べはじめた。ただのおにぎりなのに妙においしかった。『長い地球時間で僕も少し地球人になってしまったようだ。』「ガタン、ガタン。」時間が経過。小さなトンネルをいくつか通りすぎ。米原駅通過。直後空気が変わる。僕は見えないカーテンを開けてしまったようだ。始まりのカーテン。僕はまず、朝比奈を探さなくては。「次は京都。京都です。」京都駅に着いた。左足からホームに降り立った。違和感はなかった。侵入完了。これから任務遂行。ちなみにさっきの僕の隣のおじさんの時間は頂戴したし、エネルギーはまずまずってところだ。ぼくはおじさんのPCをいただきカバンへと。いいPCだ。僕はホームを下へとエスカレーターで降りた。目の前、正面京都タワーが僕をお出迎え。と同時に僕の目に水色のきれいな着物を着た男性がタワー中央よりスーッと舞い降りてきた。「ケイ、待っていました。京都へようこそ。よくきましたね。」僕の頭の上部より”懐かしい”との表示アリ。「あなたは誰ですか?」「僕が朝比奈です。」「僕はケイです。あなたに聞きたいことがたくさんあります。」

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