第27話 VS魔人戦(5)
ヘカテスは俺の剣をまともに食らい住居の壁まで吹き飛ぶ。
「やったか?」
防御は出来ていなかったはずだ。Aランクの魔力が乗った攻撃にはさすがの魔人も無傷ではいられないはずだ。
「き、貴様ぁぁぁ!」
ヘカテスは雄叫びを上げながら立ち上がり、先程まで目もくれていなかった俺に対して殺気を向けてくる。
そして俺はヘカテスの腹部に視線を向けるが斬った所には傷1つついていなかった。残念ながら一撃ではヘカテスの魔力フィールドを打ち破れなかったという訳か。
「何故この重力化の中で動くことが出来る。それが神器の能力か!」
「神器の能力? 俺は4年前に重力攻撃を食らって殺されかけてから今日この日のために身体を鍛えてきたんだ! ヘカテス⋯⋯あんたを殺すためにな!」
俺は4年前にヘカテスの重力で人を動けなくさせる攻撃を知っていた。神器の魔力が低いがために剣術を学んだり身体能力の向上の鍛錬を行っていたという意味もあるが、1番の理由はヘカテスの重力攻撃に対抗するためだ。その努力が報われ、思わず感極まってしまうが戦いはまだ終わっていない。涙を流すのをヘカテスを倒してからだ。
「まさか重力で動けない振りをして隙を窺っていたのか」
「あんたが得意気にのこのこと近づいてきたおかげで容易に一撃を食らわせることができたよ」
「この俺を欺くとは許せん!」
「欺く? 戦いで奥の手を隠すのは当たり前だろ? 奥の手は最後まで取っておけっていうのが師匠の教えでね」
「奥の手だと? それなら俺も奥の手を使わせてもらおうか」
ヘカテスは手にした剣を高く掲げる。
奥の手とは何だ? 俺はヘカテスから距離を取り様子を窺う。
「3倍の重力には堪えられたようだがこれ以上の重さには堪えられるかな?
ヘカテスが高らかに宣言し地面に剣を突き刺すとこれまで以上の重力が俺の身体にのし掛かる。
「くっ!」
さすがに4倍の重力はきついぞ。地面に倒れてしまう程ではないがかなり動きが制限されてしまいそうだ。
「な、何よこれ⋯⋯声を⋯⋯出すのも⋯⋯苦しいわ」
ララさんが完全に地べたに這いつくばり動くことが出来ないでいる。このままだと
「ほう⋯⋯まだ立つことが出来るとは驚きだな。それだけ俺の命を奪いたかったということか」
「当たり前だ。お前のせいでスルンさんが⋯⋯」
「だが俺を倒すために費やした時間は無駄になったな。もう貴様の攻撃を俺が受けることはないぞ」
俺は手に持ったサウザンドブレードでヘカテスを斬りつけるがあっさりとかわされてしまう。
「それなら!」
サウザンドブレードから光の玉が生まれ解き放つが、ヘカテスは身を捻り避けられてしまった。
くそっ! 当たらない! 光玉は重力の影響を受けていないが、ヘカテスは重力で動きが鈍くなった俺の予備動作から攻撃を読んでいるんだ。
このまま繰り返してもヘカテスを捉えることはできないぞ。
「今度はこちらから行くぞ」
ヘカテスは黒い剣を使い斬り一太刀、二太刀、三太刀と連続で斬りつけてくる。
正直な話、剣速もそれほど速くはないが重力の結界がなければ余裕で見切れるスピードだ。
しかし身体の動きに制限がある今の俺に取っては何より速く感じる。
そしてヘカテスの攻撃をかわすか捌くことしかできないのもきつい。もしヘカテスの剣を受け止めてしまったらそのまま重力に押し潰されて力負けすることが目に見えているからだ。
「ちょこまかとしぶとい奴だ! 次の一撃で仕留めてやる!」
ヘカテスの剣が黒色に光り出す。そして飛び上がると上段から剣をこちらに向かって振り下ろしてきた。
「
この剣を受け止めてはいけない。受けてしまったらそのまま力負けして重力に押し潰されることも頭に過ったが、何故か俺の中の警報器がそれ以上にヤバいことが起きるのではないかと教えてくれたからだ。
だが幸いなことに剣は大振りなため避けるのは難しいことではない。
俺は身を捻りかわそうとするが⋯⋯。
「お、重い!」
何故だかわからないが俺の身体にさらなる重力がのし掛かかり身体が思うように動かない。
「この剣の下にいるものはさらに重力が加算される! 死ね!」
くっ! これはやばい!
おそらく身体の重さからいって今俺には5倍の重力がかかっている。この重りがつけられたような身体でヘカテスの剣をかわすことができるのか? だけど受けてしまったら俺の命は確実に奪われてしまうだろう。それにまだ黒く光るヘカテスの剣から嫌な予感が消えない。おそらく対象である俺に重力を与えるだけではすまないはずだ。
もうヘカテスの剣が俺の頭上に迫っている。今から身を捻ってかわすことができるのか? 答えは否だ。この身体ではかわそうとした瞬間にヘカテスの剣で斬られてしまうだろう。
それならやるしかない。
俺は決死の覚悟でサウザンドブレードを使い、ヘカテスの剣を受け止めるのであった。
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