第13話 男女で感情が違うのは当たり前

「い、今のは私の葉桜崩しでは⋯⋯」

「良い見本があったからやってみたら思いのほかうまくいったよ」

「まさか1度見ただけで!?」


 神器が劣る俺は身体能力で勝負するしかなかったから見て使えそうな技はすぐにコピーできるように練習してきた。とはいえこの世界では剣技を極めた人などほとんどいないからスルンさんの技が大部分だが。


「す、すごいです。ユウトさんの動きは初めて見た時からただ者じゃないと思っていましたがここまでの実力者だとは思いませんでした」

「神器がFランクだから身体能力を鍛錬するしかなかったからね」

「⋯⋯私もユウトさんと同じです。魔力と神器がEランクだから剣技を磨くことしかできなくて⋯⋯」

「その気持ちわかるよ」


 大抵の人はEランク、Fランクの魔力や神器を持ったらスレイヤーの道は諦める。それでもスレイヤーを目指すためにできることは何かと考えた時に俺は身体能力の強化をすることにした。たぶんルルさんも同じだったのだろう。


「私はユウトさん⋯⋯いえ、ユウト様のことを尊敬致します」

「ユ、ユウト様!?」

「姉さん共々これからよろしくお願いします」

「いや、様付けはちょっと⋯⋯」

「いえ、姉さんがユウト様の奴隷ですから姉さんのメイドである私もユウト様の奴隷なんです」

「そんなこじつけられても困るんだけど」


 ララさんだけでも奴隷にしたなんて知られたら大変なのに妹のルルさんまで奴隷にしたことがバレたら⋯⋯想像するだけでも恐ろしい。今以上に嫌がらせを受けるのは間違いないな。


「それでは夕食の準備をしなくてはならないので失礼します」

「えっ? あっ、ちょっと!」


 しかし俺の呼び掛けには応じず、ルルさんは校舎裏を後にするのであった。

 いやいや、Eランクでスレイヤーになろうとしていることから見た目に反して我が強いだろうと思っていたけど自分が決めたことに関しては本当に曲げない性格なんだな。

 せめて皆の前では奴隷として振る舞わないでもらえるようにお願いしよう。


 こうして俺は手合わせの素晴らしいパートナーを得ることが出来たが、望まぬ奴隷も手に入れることになってしまうのだった。



 そしてルルさんと別れた後、俺は個人の鍛錬を終えて寮にある自室へと戻ると2人の同居人が出迎えてくれた。


「お帰りなさいませ」

「⋯⋯オカエリナサイマセ」


 ルルさんは笑顔で、ララさんはやる気のない態度だったので、双子で同じ顔の作りでも表情がこんなに違うのがおかしくて思わず苦笑してまう。


「笑うんじゃないわよ」

「そんな無理しなくてもいいですよ」

「しょうがないでしょ。一応奴隷なんだから」


 本当に律儀だな。この姉妹は性格は全然違うけど根っこの部分は同じようだ。


「とにかく早く中に入りなさいよ。いつまで私を玄関に立たせておくつもり?」

「ごめんなさい」


 しかしルルさんはララさんと違って見せかけだけの奴隷なのですぐにボロが出てしまっている。

 いつか本当に従順な奴隷になる日は来るのだろうか?

 俺はありえないだろう未来を想像しながら自宅へと入る。


「今夕食を作っているのでもう少しお待ち下さい」


 キッチンから既に良い匂いが漂っている。どうやら朝食の時のように夕食も期待して良さそうだな。

 俺はベッドに座りながらルルさんが作る美味しそうな食事を待つことにする。

 そしてララさんは俺と同じ様に自分のベッドで脚を組んで座る。ララさんは部屋着なのか何なのかわからないけど赤い短いスカートを履いているため、綺麗なおみ足が惜しみ無く出されていた。

 おいおい、もう少し年頃の異性がいることを気にしてほしいものだ。

 もし俺が少し移動すればスカートの中身が見えてしまう事案だぞ。

 だけどそのことを指摘するほどララさんと仲が良い訳でもないし、逆に指摘することでララさんに恥をかかせることになってしまうかもしれない。

 それなら俺のやることを1つだ。


 俺はベッドの上で座禅を組み、そして眼を閉じる。

 これなら傍から見ても精神集中の修行をしているように見えるし、眼を閉じているためララさんのスカートを気にしないで済む。


 そして俺は周囲の雑音を消して自分の心の中に集中する。


 やはり雑念がある時に座禅は最高だな。邪な心が洗われていくようだ。

 夕食が出来るまでこのまま過ごすとしよう。

 だがこの後、俺の座禅の時間は唐突に終わりを告げる。


「ねえ」


 ん? ララさん?


 突然近い距離から話しかけられたため、俺は慌てて目を開ける。

 するとララさんは自分のスカートをたくしあげ、その中身を惜しみ無く見せつけてきた。


 こ、紺色!

 学生の俺には刺激的過ぎる光景だ。


「ララさんダメだ! 奴隷だからってそんなことしなくていい! そ、それに今はルルさんもいるし⋯⋯」


 俺はそう言いつつも本能なのか薄目でララさんの様子を見てしまう。

 やはり夢ではない。

 ララさんは自分でスカートをたくしあげ、挑発的な顔をして下着を見せている。


「ルルがいなきゃ良いってことなの? 今も薄目でこっちに視線を送っているし真面目そうに見えて意外とむっつりスケベなのね。瞑想する前もこっちをチラチラ見ていたし」

「うっ! バレてる! でもララさんがそんな格好をしているから⋯⋯」

「これ? これはオーバーパンツよ」

「オーバーパンツ?」


 なんだそれ? オーバーっていう言葉がついているけどパンツはパンツじゃないのか?


「男子には聞きなれない言葉かもしれないわね。見せパンよ」

「見られても大丈夫なパンツだっけ? でも何でこんなことを⋯⋯」

「私のスカートの中が気になっているようだから教えて上げただけ。別にオーバーパンツだから恥ずかしくないし」

「いや、男からしたらかなり刺激的な光景だから止めた方がいいかと」


 俺は男性目線の気持ちを正直に伝えるとララさんの顔がみるみると真っ赤になっていった。


「べ、別にこんなの恥ずかしくないし! けど一応ご主人様の忠告だから聞いてあげるわ! 感謝しなさいよね!」


 ララさんはそう早口で捲し立てると部屋を出ていきトイレへと行ってしまった。

 いったい何に感謝しろというのだろうか。まあ刺激的な姿を見れたことは感謝しているけど。


 こうしてララさんは俺に指摘され恥ずかしかったのか、30分程トイレに立てこもってしまい中々外に出てこなかった。しかし夕食の良い匂いが部屋に漂うとお腹が空いたのか、ララさんはようやく外に出てきて何事もなかったかのように食事を食べるのであった。





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