第2話 夢

部活に急ぐ人の間を通り抜け、下駄箱へ向かう。いつも人が多く、騒がしい。玄関を出て、手を繋ぎ笑顔で歩くカップルを眺める。

「俺に彼女とか無理だよな。」

少し小さめに呟いた。

きっと何人かには聞こえていただろう。

早く帰ろうと足を早ませる。駅の方向へと人が流れ、駅へ着き電車に乗れば、同じ制服を着た生徒で電車は満員になる。

電車に揺られること15分、佐倉駅だ。最寄駅で、漢字は違うがさくらと少し前に過ぎた春を思わせるような駅名だ。

気楽そうな顔を浮かべた野良猫を見たり、近所の子供を眺めたりしていると家に着く。

いつも通りだ。

「ただいま。」

返事がすぐに帰ってきた。

「「「おかえり。」」」

どうやら夕飯の支度が終わっているようだ。

いつもどおり夕飯を食べ、お風呂を済ましあっという間に11:13、スマホのホーム画面が示している。

「もう寝ようかな。」

明日は早めに学校終わるな、そんなことを考えているうちに記憶が途切れた。


『太ももとお尻と胸どれが好き?』

「は?」

この一言しか浮かばない。目の前には知らない女。てか普通お尻と胸だろ。ツッコんでいる暇はない。

『だーかーらー太ももとお尻と胸どれが好きなの?』

少し悩む。この人が誰かもわからない。

「あの誰ですか?」

『誰って隣のクラスの⬜︎⬜︎⬜︎』

聞き取れない。1番大事なところ。


目が覚める。アラームの鳴っているスマホ画面には09:34の文字。

寝ぼけている俺でもわかる。遅刻確定。


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