第9話 ナイフ使いVS5人パーティー
初期レベルは、たぶん全員1。
レベルが上がる前の今なら数が多い方が有利。
それは間違っていない。
余裕ぶっているだけで、俺は必死にここから逃げる算段を考える。
――元和君。
突然、頭の中にコノハの声が響いてきた。
――喋らないで。今、思念波で話しかけているの。私が指示を出すから、元和君は私の指示通りに戦って。大丈夫、私が君を守るから。
――わ、わかった。
心の中で返事をすると、俺はコノハの指示に従って構えた。
まずは先手必勝。
弓を構えている男子に、時間差で二本のナイフを投げつけた。
「遠距離で弓に勝てるかよ!」
案の定、一本目のナイフは矢に撃ち落とされた。
だが、二本目は生きている。
投げナイフと違い、弓は二射目を弓に番えるのに時間がかかる。
男子が背中の矢籠から矢を一本引き抜き、弓の弦に引っかけたところでナイフは喉元に深々と突き刺さった。
「ぐぐっ、がっ!」
血に溺れるように吐血しながら弓の男子は仰向けに倒れた。
この間、約一秒。
続けて俺が向かったのは、コノハへセクハラを働いた下野山だった。
魔法の杖らしきものを持っている所から、どうやら攻撃魔法使いを選択したらしい。
「元和! お前を殺してあの爆乳を楽しんでやるぜぇ!」
鼻の下を伸ばす下野山の杖先で、紅蓮の炎が成長していく。
背後からは、井宮ともう一人、斧を持った男子が追いかけてくる。
俺は挟み撃ちに合っている形だけど、これもコノハの作戦だ。
「喰らえ! ファイアボール!」
下野山の炎球が杖から放たれた直前、俺はナイフ使い特有の敏捷性でスライディング。
地面を低く滑走した。
頭上を、いや、目の前を灼熱を炎が通り過ぎる瞬間の光景と顔を炙る熱気にひやりとするも、回避には成功。
俺の上を通り過ぎた炎球は、井宮と斧男子を飲み込み炸裂した。
「「ぎゃああああああああああああああああ!」」
「や、やべっ!」
井宮たちの悲鳴に下野山が慌てふためき、おたついた。
俺の存在を忘れ、燃え盛る井宮たちに気を取られている隙に、俺は下野山の足元に辿り着いた。
そして、目の前の汚らわしい股間目掛けてナイフを根元まで突き込んだ。
「いんぎゃぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
口から断末魔の叫び声をブチまける下野山の股間で、俺はぐりんと腕を回してナイフを180度ねじった。
「ひぎゅうううウウウウウウウウウウウウウウううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううッッッ!!!!!!」
全世界の苦痛を煮詰めたような絶叫を雄たけぶ下野山の股間で、俺は手の底でしっかりとグリップを固定し、立ち上がった。
刃越しに、軟質なもの、硬質なもの、他、さまざまな感触と手ごたえを感じながら、ナイフはのけぞる下野山の股間から下腹へ駆け上がり抜けた。
「■■■■ッ■■■■ッッ■■■■■、■■■■■■、■■■■■■■■、■■■■■~~■■■■■■■■ッッ■■■■■■■■■■■■■■■!!!」
仰向けに倒れた下野山は口と両目から血の泡を吹き、地獄の底でも耳にしないようなうめき声を漏らしていた。
恥骨を切断した。
もう、立ち上がることはできないだろう。
――元和君。私はそんなこと一言も!
――でも下から一撃って言ったじゃないか。
――言ったけど!
――全世界の女性のためにも、あいつはここで再起不能にするべきだ。
――そ、それは、え~っと……。
コノハが悩む間に、俺は炎に巻かれて地面を転がりまわる井宮と仲間の男子へ容赦なく投げナイフを叩き込んだ。
井宮は腰に、男子は背中に刺さるも転がるを勢いは殺せず、刺さったナイフが地面にぶつかり自ら肉を抉ることになった。
「ぎぇえええええ!」
「ぎゃあああああああ!」
これで五人中四人が再起不能。
残る一人は回復魔法使いらしかった。
手に持っている杖は白く、僧侶っぽい。
「で? どうする?」
五人目の男子は三軍の、いつもびくびくしながら他人の顔色をうかがっている奴だった。
保身の為なら俺へのいじめにも加担する臆病者である一方、脅されていることを考えれば情状酌量の余地がなくもない。
だから、選ばせた。
「ヒィッ!」
案の定、五人目の男子は井宮達を捨てて逃げ出した。
とはいえ、戦闘力のないあいつが魔獣の住む森から生還できる可能性は低いだろう。
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